時刻は午前九時半を迎えた。今この瞬間のフローニンゲンの空は、うっすらとした雲に覆われている。
そんな空の下を、一羽のカモメが飛び去っていく姿が見える。天気予報を見る限りでは、今日は一日中曇りのようだ。
先ほど、早朝の作曲実践を終え、ハーモニーに関する書籍を少しばかり読み進めていた。音楽理論や作曲理論に関する書籍を読み際には、そこに記載されている事柄を、今後の作曲実践でいかに活用していくかに思考が巡らせていく。
もちろん、書籍に記載されている観点の全てを曲中でうまく活用することはまだ到底できないが、観点の獲得と、それを実際の曲の中で活用してみようとする意識は絶えず持っておきたい。
あと三十分ほどしたら、協働プロジェクトに関するオンラインミーティングがある。ミーティングに向けた準備はすでに昨日の段階で完了しているため、ワードファイルに書き留めておいた本日のアジェンダを再度確認しておこうと思う。
ミーティングが終われば、その流れで昼食前の作曲実践を行いたい。その際には、ベートーヴェンの曲に範を求めようと思う。
どの曲を参考にしようとするかはすでに決めており、その制作年を見ると、それはベートーヴェンが39歳の時に作ったものだということがわかった。そのあたりの時期は、ベートーヴェンの耳の病気が発覚してから随分と時間が経ち、それが悪化の方向に向かっているような頃ではないかと思う。
近々ベートーヴェンが書き残した手紙が収められた書籍“Beethoven’s Letters (1972)”を読み返し、ベートーヴェンの人生史と照らし合わせながら作曲実践を行いたいと思う。
一人一人の作曲家の生涯を辿り、彼らの思想を理解することに努めていきたい。それと歩調を合わせるように、彼らが残した曲を参考にして曲を作っていく。おそらくそうしたあり方と実践が、他者と共に発達するということなのだろう。
昼食前にベートーヴェンの曲を参考にする際には、久しぶりに突然転調を試してみたいと思う。あるいは、普段転調する時よりも少し遠い調へ転調させることを試してみたい。
その際に意識することは、突然転調を試す場合であれば、それが効果的な響きを生み出す条件を探り、遠隔調への転調を試す場合であれば、転調前後のつながりをなめらかにすることを意識したい。また、曲のテンポや拍子を変えるといかような変化が曲にもたらされるのかについても観点として持っておく。
音楽は人間の発達と同様に、時間と密接に関係しあったものであるがゆえに、テンポや拍子に関する探究をしていくことは重要だろう。時間に関する諸々の哲学書を紐解こうとしている自分がいるのはこうした事情にもよる。フローニンゲン:2019/2/22(金)09:48