早朝目を覚ますと、時刻は午前四時だった。随分と目覚めが早かったので、そこからもう一時間半ほど眠ることにした。
五時半に起床した時には、雨音が聞こえてきた。今日は久しぶりに雨のようだ。
昨日は相当に気温が上がり、今日の雨はフローニンゲンの街全体を冷やすかのように降っている。気温は昨日よりも10度ほど低い。
今日から一週間は涼しい日が続くことになる。雨が降ったのは久しぶりであるから、先ほどまで書斎の窓の方に近寄り、雨の降る様子を眺めていた。特に目的もなく、雨の音に耳を傾け、雨が静かに降っている様子をただ眺めていた。
雨が静かに降りしきる中、今日の活動の計画について簡単に書き留めておこうと思う。今日はまず最初に作曲実践を行う。バッハの二声のコラールに範を求めて一曲作る。
その後、ハワード・ガードナーの“Creating Minds: An Anatomy of Creativity Seen Through the Lives of Freud, Einstein, Picasso, Stravinsky, Eliot, Graham, and Gandhi (1993)”を読み始める。本書は、領域の異なる過去の偉大な七人の創造的な人物を取り上げ、彼らの創造性の特徴を発達心理学を含めて様々な観点から論じたものである。
昨日の段階で本書の全体を眺め、どこの章を念入りに読むかを確認していた。三つのパートから構成されているうちの、最初のパートにおける「創造性研究へのアプローチ」をまず読み、二番目のパートの中ではピカソとストラヴィンスキーの箇所を読む。最後のパートにおいては、「多様な領域における創造性」という箇所を読んでいこうと思う。
ガードナーは一般書を多く執筆する多産な学者であり、彼の書籍から得るものは非常に多い。一冊一冊は比較的分量があるため、自分の関心に合致する箇所を丹念に読むように心がけていく。
芸術教育や霊性教育の探究に並行して、創造性に関する探究も行っていきたいと思う。なぜなら、それは芸術性や霊性と密接に関わっているものだと考えているからだ。
フローニンゲン大学での最初のプログラムは「タレントディベロップメントと創造性」というものであり、まさに創造性に関する探究を科学的に行ってきた。しかし今の私は、創造性を科学的に探究するというよりも、思想的な側面から探究を進めていきたい。その際にガードナーの書籍は非常に有益だ。
ここのところ、芸術教育や霊性教育に対する関心が高まるばかりである。その背景には、自分の実際の体験として、それらがいかに重要で意義のあることかを感じていることが挙げられるだろう。
シュタイナーも述べているように、絶えず自己教育を施し続けることが人間として充実した人生を送ることに不可欠である。シュタイナーは自己教育の対象を細分化していなかったが、現代においてそれを細分化するならば、それは芸術教育、霊性教育、投資教育の三つに分けられるのではないかと思う。
前者二つが自己を深める際に極めて重要な役割を果たす一方で、後者はこの現代社会を生きていく上で不可欠な役割を果たす。私たちは精神的かつ物質的な次元で生きていることを忘れてはいけない。
どうも片方の次元を強調しすぎるような風潮が世間では見られるが、それらのどちらも大切なのだ。片手落ちの状況であると、人は結局豊かに生きることはできないのではないかと思われる。
とりわけ、文明圏に生まれた人間にとってみれば、物質的な生活をないがしろにすることはできないだろうし、仮に物質的に豊かでも、精神的な生活を豊かにしなければそれは質的に貧しい生だと言わなければならないだろう。
いずれにせよ、現代人が真に充実した形で人生を送るためには物質的・精神的な次元の双方で自分の望む豊かさが必要だ。そうした豊かさをもたらすのが、上記で挙げた三つの教育なのだと思う。フローニンゲン:2018/8/8(水)06:42