今はまだ優しい太陽がフローニンゲンの街全体を包んでおり、雨が降る様子はない。午後から行われるミヒャエル・ツショル教授とのミーティングが終わり、自宅に帰るまでになんとかこの天気がもって欲しいと思う。
午前中からスヴャトスラフ・リヒテルの演奏するバッハを聴き続ける中で仕事を進めていた。仮にこの秋から米国の大学院に所属することになれば、そこで新しい研究に着手しようと思っていることは以前にも書き留めていたように思う。
これまでの研究領域とは一見すると懸け離れた領域の研究にも着手する。それは、作曲技術の発達に関する研究だ。
先ほど休憩のために手を止めた時、これから行うと思っている研究の内容とその進め方についてぼんやりと考えていた。自分自身が作曲を行っているということに加え、作曲に伴う創造の喜びを他者と共有し合いたいという思いから、この研究に取り組んでみようと思った。
先ほど考えていたのは、とりわけ研究対象領域とそのデザインに関するものだ。この研究はおそらく一連のいくつかの研究に分けて進めていくことになると思う。
まずは作曲理論の理解力に関する発達プロセスを明らかにするような研究に着手する。その際に定量化基準として用いるのはカート・フィッシャーのダイナミックスキル理論かマイケル・コモンズの階層的複雑性モデルになるだろう。
作曲理論の理解力の発達プロセスを調査する際に、最初に行うべきは調査対象領域の設定である。ここでは必ず専門家の力が必要だと思う。
作曲理論を構成する具体的な領域(例:ハーモニー、メロディー、転調)を列挙し、それらの中から最重要なものをいくつか取り上げる形で調査を進めていく。
ひとたび調査領域が明らかになれば、次に行うのはそれらの領域の理解力を測定するための研究デザインを設計していくことだ。今のところすぐに思いつくのは、ケーススタディのような形で、実際の楽譜の抜粋を提示し、それについて調査領域ごとに一つずつの問いを用意していく。
例えば、最初の問いはメロディーに関する理解力を試すもの、次の問いは転調に関する理解力を試すものというようにケース設計をしていく。ここまでの一連の流れは、これまで私が行ってきた発達測定の開発プロセスとほとんど同じである。
ただし、これまでに若干抜け漏れていた観点としては、提示するケーススタディ、つまりタスクの難易度をどれほどのものにするかということである。タスクの難易度をどのように設定していくかについては、心理統計を含め、テストの設計理論の基礎を学ぶ必要があるだろう。
この点についても他の専門家に意見を求めようと思う。ここまでのデザインが完成すれば、あとは調査の対象者を決める。
理想的には作曲を学ぶ子供から高齢者までを調査対象にしたいが、最初のうちは対象を絞る必要があるだろう。自分も作曲を行っているだけに、自分がどのような回答をし、それぞれの作曲領域に対する理解度はどれほどなのかを自分でも測定してみたい。
最後に、この研究をある程度進めることができたら、次に調査をしたいのは、実際に生み出される曲の複雑性の分析とその発達プロセスである。つまり、上記の作曲理論の理解度に加えて、実際に生み出された曲の複雑性とそれがどのように発達していくのかを調査したい。
これによって、自然言語と音楽言語の双方の切り口で作曲技術の発達プロセスを解明していくことができる。ここでは実際の楽曲をどのように定量化するのかということが論点になるため、ここでもまた専門家の力が必要だろう。
この調査が進めば、作曲理論の理解度と実際に生み出される曲の複雑性の度合いの相関関係などを明らかにすることもできる。上記の一連の研究に是非とも取り掛かりたいという思いで一杯である。フローニンゲン:2018/4/4(水)11:38
No.945: Micro Cosmoses to Macro Cosmos
What if our micro cosmoses unite into one harmonic macro cosmos?
I think that our humanity should actualize it, and I hope that our humanity is going toward the actualization. Budapest, 17:19, Thursday, 4/19/2018