どうしても居ても立っても居られないことがあった。しかし、それは落ち着いた衝動だったと言える。
クレラー・ミュラー美術館を訪れたことをきっかけに、やはりゴッホの存在は私にとって極めて重要なものだということが、時計の針が進むごとに強く実感される。美術館内の売店で、散々迷った挙句、タッシェン社が出版している日本語訳の画集を購入した。
あえて日本語訳のものを購入したのは、その翻訳文の日本語が自分に響くものだったからだ。研究の性質上、そして自分が欧州で生活をしているという都合上、和書を購入することはほとんどない。
ただし、どうしても手元に置いておきたい和書に関しては、アマゾンで購入し、それを実家に送り、一時帰国する際にそれらを持ち帰るようにしている。この数ヶ月の間に、寺田寅彦、永井荷風、川端康成、小林秀雄、福永武彦、吉田秀和氏の全集を合計で40冊ほど購入した。
これらの全集を購入したのも、著者の思想の中に自分の内側に響くものがあったからであり、彼らの日本語にどうしても触れたいという強い思いが湧き上がったからである。
彼らの日本語に触れるというのは、彼らの思想に触れることに他ならない。さらには、それは彼らの存在に触れることに他ならない。
私はもはや、自分が触れる日本語に対しては極度に慎重な姿勢を持たざるをえない。上記の著者の日本語に触れようと思ったのは、彼らの思想に触れたいという私の内発的な動機があったからだと思う。
また、今の私は、彼らの思想に触れる必要があるという、半ば衝迫的な思いがあったことは確かだ。できればそれら40冊の全集を一気に欧州に持ち帰りたいが、仮に今回全てを持って帰ることができなくても、次回の一時帰国の際に残りを持って帰りたいと思う。
思想を形成し、それを生涯にわたって深めていった人物の言葉だけが、今の私の肥やしとなり、精神的支柱となる。 昨夜もタッシェン社が出版しているゴッホの画集を眺めていた。ゴッホと弟のテオとの手紙によるやり取り、作品の背後にあるゴッホの生き様と思想に関する説明文を読んでいると、居ても立っても居られない思いが湧き上がってきた。
「ゴッホについてもっと深く知りたい」という、単純に述べればそうした思いが抑えられなくなってきたのである。ゴッホは単に絵を描き続けた人ではなかった。
ゴッホは、画家であるのと同時に、執筆家であり、思想家でもあった。絶えず書き、絶えず作ることを行っていたのがゴッホだ。
絵画の技法のみならず、生きることの意味やあり方を問い続け、それらをテオへの手紙にしたためながら自らの思想を育んでいったゴッホ。そうしたゴッホの生き様は深く私を打ち、ゴッホが絶えず書き、絶えず作ることに従事していた姿と今の自分の姿を自然と重ねていた。
「他人事ではない」という感覚。「ゴッホは他人なのだろうか?どうもそうは思えない」という、問いと応答。
己を知るためには、ゴッホを知る必要があるのではないか、という思い。ゴッホを知ることが己を知ることにつながり、それが己を深めていく、という確かな思い。
「ゴッホが私をオランダに連れてきたのだ」という、疑いようのない因果関係。ゴッホの画集を眺めていると、そのような思いが深まる一方であり、ゴッホがテオに宛てた手紙を一つも残さず全て読む必要がある、と私は思った。
調べてみると、ゴッホとテオの手紙が全て収められた書籍が何冊か存在することを知った。そのうちの二冊は、基本的に手紙の文章を紹介することが主であり、時折絵画作品が挿入されている程度であった。
一方、もう一つ大変興味深い全集を見つけた。これは単なる書籍というよりも全集だと述べた方がいいだろう。
この全集には、ゴッホとテオとの手紙が全て時系列で収められているのみならず、手紙の中で言及されている作品が、逐一手紙の横に掲載されている。当然ながら、そうした構成のため、一冊の書籍に全ての手紙が収まるはずはなく、この全集は全六巻のセットになっている。
私が見つけた他の二冊のペーパーバックとは異なり、こちらはフルカラーのハードカバーであり、文献資料としての価値も極めて高いように思われた。ゴッホの「書き続ける過程の中で作り続ける」という生き様を理解するためには、手紙と絵画作品の双方を同時に触れることが重要だと思っていた。
まさに本書は、手紙の横に絵画作品の綺麗な写真が挿入されており、絵画の背景にある文脈を手紙を通じて理解することができる。この全六巻のセットは、“Vincent van Gogh - The Letters: The Complete Illustrated and Annotated Edition (2009)”という名称であり、価格はおよそ400ポンド(6万円)であった。
私は、遅い誕生日プレゼントと早いクリスマスプレゼントを兼ねて、この全六巻の画集をイギリスのアマゾンを通じて購入することにした。早ければ、来週の頭までには到着するだろう。
ゴッホとテオの全ての手紙が収められたこの画集は、私が今この瞬間に生き続けるためにどうしても必要だった。2017/11/22(水)08:22 No.457: The Essence of Somatic Comprehension I was reading van Gogh’s letters.
His father once told him that understanding and feeling must go together.
That is what I always think. Van Gogh’s father clearly pointed out the essence of somatic comprehension.
It is a signifiant key to learning. 15:36, Sunday, 12/3/2017