とても静かな日曜日の朝。気温の暖かさではなく、別種のぬくもりを喚起するような朝だ。昨日の早朝は雲が空を覆っていたが、今朝は雲がほとんどない。
風もほとんどなく、目の前に見える木々の葉がおとなしくその場にたたずんでいる。赤レンガの家々の屋根に太陽光が照らされ、ほのかな黄色を発している。
今日もこれからオンラインゼミナールのクラスがある。昨日のクラスに関しての振り返りが完全にできておらず、印象に残っている点をまた書き留めておきたい。 私が以前在籍していたレクティカの調査で一つ興味深いものがある。適切な実践を積んでいる者は、一年間にどれだけ能力を成長させることができるのだろうか、というものである。
この研究ではカート・フィッシャーの尺度を用いて、実践者の能力が一年間にどれだけ伸びるのかを調査した。結果は、年間に0.1から0.15ほどの伸びを見せ、実践を一切しなければ能力は一向に伸びないことが明らかになった。
「0.1から0.15」という伸び率を小さいと感じるかもしれない。しかし、能力の成長というのは、適切な実践を積んだとしてもそれぐらいにしか伸びていかないということを認識しておいたほうがいいだろう。
成長至上主義がはびこる世の中において、特に能力開発の現場において、早急に人を成長させようとする傾向が強いことを考えると、この実証結果は成長至上主義的な発想に歯止めをかける役割を果たしてくれるだろう。
この研究に関してもう一つ着目するべきは、「0.1から0.15」という伸び率が子供と大人の双方においても見られるということだ。成長が早いと思われがちな子供でもそれぐらいの伸び率しかないという点、成長が遅いと思われがちな大人でもそれぐらいの伸び率を持つという点、これら二つの点が示唆することを立ち止まって考えることは重要だろう。
上述のように、子供たちのように成長期にある者たちですら、一つの能力を伸ばしていくことには時間がかかるのである。拙書『成人発達理論による能力の成長』でも取り上げたように、子供の時期に成長を急がされた者たちは、「ピアジェ効果」を経験してしまい、成人期以降の成長が止まってしまうのだ。
確かに、子供たちは体や脳を著しく発達させていくが、知性に関する発達は体や脳の発達よりも緩やかに時間をかけて成し遂げられるものだということを常に念頭においておく必要があるだろう。一方、成人に関して言えば、成人は身体の成長が止まり、それに伴って知性の成長も止まってしまうと思われがちである。
しかし実際にはそうではない。確かに体の発達は止まってしまい、子供たちに比べれば脳も大きく発達することはないだろう。しかし、脳に関しても、子供たちのように前頭葉が大きく発達することはないが、それでも脳内の神経ネットワークは知識と経験の蓄積によってより複雑になる。
これは脳に備わっている「可塑性」という特徴のためである。そして重要なのは、成長が止まってしまいがちだと思われる成人期においても、具体的な課題に取り組むという実践を積み重ねていけば、能力は成長していくのだ。
これまで私は、成人期においては課題がより高度化してくるため、成人になればなるほど成長速度が遅くなると説明していた。確かに、課題が高度化し、それを乗り越えていくための能力を獲得するのはより困難になる。
しかしそれでも、適切な支援を得ながら絶えず実践に励んでいくことができれば、成人の能力は成長を遂げていくことができるのだ。その点をレクティカの研究が示唆してくれている。
身体的な成長の著しい子供においても、能力の成長は年間に「0.1から0.15」しか伸びないのだということ、身体的な成長の止まった成人においても、年間に「0.1から0.15」ほど能力が成長してくのだということを再度頭に入れておくことは、子供たちに対して無理な成長支援をしないために重要であり、大人にとっては能力の成長を放棄しないために重要になるだろう。2017/8/6(日)
No.44: Diary for The Veritas of Humanity Edvard Munch kept a diary throughout his life. A diary was an artistic and philosophical apparatus for him to deepen his thoughts and emotions.
Also, he reflected upon human existential issues, keeping a diary. His attitudes towards the depth of human inner realms inspired me very much.
A diary is an open door to the veritas of humanity. Sunday, 8/13/2017