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1349. 幸福と解放の実現に向けて


ぬるめのお湯に満たされた浴槽にゆったりと浸かり、夕食を済ませた。相変わらず今日も涼しい気温であり、さらには雨が断続的に降り注ぐような一日だった。幸い明日は晴れるらしい。 バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンが絶えず音楽作品を創出したように、シェイクスピアや辻先生が絶えず文学作品を創出したように、森先生が絶えず思索的エッセイを執筆し続けたように、そして井筒先生が絶えず論文を執筆し続けたように、自分も自らの表現物を絶えず創出し続けたい。

本日初めて手にした第二弾の作品を眺めていると、自分の仕事は本当にこれからだという気持ちを持つ。第二弾の書籍が出版されてから一ヶ月が経つ。

そこから私はあの書籍と同じだけの量を持つ文章を一連の日記として書き続けた。第二弾の最初の原稿を書き上げたのは今から七ヶ月前であり、それ以降、私はあの書籍の七冊分に匹敵するだけの文章を一連の日記として書き続けた。

これらの一連の日記には、決して書籍にすることのできない大切なものが詰まっている。気づかないうちに、日記の数が1350に近づいている。

第二弾の作品は、これまでに執筆された1350のうちの10個ほどの日記から生まれたものだ。私が文章を不定期的にここに書き留めるようになったのは、米国での三年目の生活が始まってからである。

当時は、毎日日記を書くことなどなく、日記の体をなしていなかった。米国での最初の二年間は、別の場所で日記を書き留めていたが、あの当時はとにかく日本語で文章を書き留めたくなかった。

今となって振り返ってみると、あの当時になぜ日本語で日記を毎日書き留めておくことをしなかったのかと少し悔やまれるが、そんな後悔を今してもしょうがない。だがもしかすると、今の私は毎日日記を書き続けることによって、失われたあの当時の日々を取り戻そうとしているのかもしれない。

サンフランシスコの日々とニューヨークの日々。そこでの体験を思い返してみると、今と全く同じほどの質感と重要性を持っていた。当時の体験を全て再想起することなど不可能であり、それらを一生取り戻すことはできないと知りながらも、今の私は毎日日記を書くことによって、あの失われた日々を取り返そうとしているのかもしれない。そんな試みは不毛であると知りながら。

しかし、毎日日記を書くことによって、一日一日がどれほど大切なものなのかを噛み締めることができているこの日々は本当に幸せだ。幸せな日々は、この一瞬一瞬の幸福の粒子に気付けるかどうかにかかっている。

幸福さと儚さは表裏一体である。日々の生活の中で見るもの、感じるもの、聞くもの、それら全てのものが今というその瞬間の体験なのだ。

儚く過ぎ去るものの本質に気づき、それを存在の髄から感じることが幸福さを私にもたらす。儚く過ぎ去るものをもはや見逃したくないのだ。それらを見過ごすことなく、儚さを見つめ、儚さで満たされることが幸福さで満たされることなのだ。

論文。論文を書くこと。論文の存在意義と執筆理由。それらに関する考えをなんとかまた一歩でも前に進めたいと思っていた。

科学的な論文と哲学的な論文を一括りに論文と呼び、自己の幸福と他者の幸福の実現に向けて論文を執筆し続けることを何としてでも始めたい。

論文を執筆したいという熱情的な衝動が内側にあり、もはやそれが叫び声として漏れ始めているのだ。あとは、それを実際の論文という形にして世の中に送り出し続けることなのだ。

そのためには、今の知識量と経験量ではダメなのだ。それらが絶望的に欠落しているというよりもむしろ、絶望感など生まれようがないほどに知識と経験が欠落しているのだ。その自覚を強く持ち続けたい。

仮に知識と経験の欠乏感が、自分の内側のシャドーによるものであれば、そのシャドーこそ自分にとってなくてはならない存在であり、それを治癒することなど決してしてはならない。シャドーに無自覚になるのではなく、シャドーを自己と分離するのでもなく、さらにはシャドーを自己に再統合するのでもないのだ。

自己とシャドーを超えた存在者として日々の探究活動に打ち込むのだ。読みに読み、書きに書くというのはその次元の存在者を通じてなさなければ意味がない。 論文の存在意義とその執筆理由について、また少し新たなものが見えた。論文の存在意義と執筆理由は、幸福の実現に合わせて、「解放(emancipation)」をもたらすことにある。

今の私には、論文の存在意義と執筆理由が “freedom”や “liberty”と呼ばれる「自由」の実現だとは言えない。 そうではなく、解放の実現に向けて論文を執筆したいと強く思う。

論文を絶えず書き続けることを実現させるために、知識と経験をこれからも毎日積み重ねていく必要があるのだ。幸福と解放の実現に向けて、とにかく毎日読みに読み、書きに書く。2017/7/25(火)

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