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1314. MOOCに関する二年目の研究案


今日は午後から、大学の学生支援課に行き、二年目のプログラムの学費を納めに行く。昨年は幸運にも、EUROが弱い時期に欧州での生活を始めることができ、日本円の強さも手伝って、学費や生活費を低く抑えることができた。

一方、その時の状況と比べてみると、最近はEUROが強くなっている。実際に、昨年は1EUROが110円を切るときもあったのに対し、今は130円前後をうろついている。

為替の変動によって数十万円ほど学費が高騰したような感じを受けるが、資産の大部分が日本円であるから、こればかりはどうしようも無い。午後に学費を納めたら、大学図書館に行き、読むべき論文を10本ほど印刷しようと思う。

今朝は、「マルチフラクタル」に関する論文を二本ほど読み進めていた。両者は共に、私が少し前から注目をしていた「マルチフラクタルトレンド除去変動解析(Multifractal Detrended Fluctation Analysis: MFDFA)」に関するものである。

それらの論文を読みながら、九月から始まるフローニンゲン大学での二つ目の修士課程——欧米での三つ目の修士課程——において、修士論文の主題がより明確になった。当初より、今回の修士論文はMOOCを題材とし、MOOCのコンテンツと学習効果について何らかの研究を行おうと思っていた。

先々週あたりに、突然思いついた研究アイデアをノートに書き留めていたが、それよりも一歩進んだアイデアが先ほど思いついた。以前のアイデアは、MOOCの一つのコースを取り上げ、一つのコースを構成する隔週のレクチャーそれぞれに対して、カート・フィッシャーのスキル尺度を用いて複雑性を定量化し、それによって生み出される時系列データのフラクタル構造と隔週のミニテストの成績と最終課題の成績を比較するというものであった。

先ほど思いついたものに関しても、時系列データを生成し、それに対してフラクタル解析を行うことは同じなのだが、フィッシャーのスキル尺度を用いて定量化するよりも、レクチャーの一つ一つのセンテンスの語数をもとに時系列データを作成し、それに対してフラクタル解析を行おうと思った。

その理由として一つには、フィッシャーのスキル尺度を全てのレクチャーに対して行うのはあまりに時間がかかるということである。別の理由としては、フィッシャーの尺度に習熟している人が周りにはほとんどいないため、データに関する測定者間信頼性を確保することが難しいということもある。

数週間前の私であれば、センテンスの語数を数え、それを時系列データとすることに抵抗感を示していたであろう。というのも、これまで構造発達心理学の研究に従事していた私は、常にセンテンスの構造とその構造が持つ複雑性度合いを分析することに従事しており、センテンスの語数を数えるというあまりに単純な方法では、複数のセンテンスから構成されるコンテンツの構造や複雑性を分析することなどできないだろうと思っていたからだ。

しかし、この考え方は誤りであることに気づいた。非線形ダイナミクスの理論と手法を学ぶにつれて、センテンスの語数からでも、コンテンツの構造や複雑性を分析することが十分に可能だということがわかったのだ。

これは私にとって、大きな認識転換だった。一つ一つのセンテンスは、特定の語数を持っており、それを一つのデータとする。すると、毎週のレクチャーに対して、100近いほどのデータポイントからなる一つの時系列データを生み出すことが可能になる。

今回の研究で取り上げる予定のコースは七週間にわたるものであるから、合計で700ほどのデータポイントを得ることができる。隔週ごとの時系列データに対してフラクタル解析を適用し、そのフラクタル次元を特定する。

そのフラクタル次元と、隔週ごとの確認テストの結果を比較する。さらに、コース全体に及ぶ時系列データのフラクタル次元を特定し、それと最終課題の成績を比較し、どのような関係が見出せるのかを調査してみたいと思う。

先ほどの論文は、世界の著名な文学作品に対してフラクタル解析を行い、その結果、多くの作品が、人が心地よいと思う音が持つフラクタル次元と同じような次元のフラクタル構造を持っていることがわかった。

つまり、世の中で傑作とされる文学作品は、人に心地よさを与えるような構造的リズムを持っていたのである。ここから、文学作品は優れた音楽作品と同様に、意図的に構築することが可能だと思わされた。

そこからさらに、MOOCにおいても、教育効果のあるコンテンツを意図的に構築していくことが可能だと思ったのだ。優れたレクチャーには、学習効果を高めるような構造的リズムが隠されているのではないかという仮説のもと、今回の研究を通じて、一つのコースを構成する各レクチャーのフラクタル次元を明らかにし、それと実際の学習成果を比較することを行いたい。

まだ二年目のプログラムは始まっていないのだが、すでにデータを収集し、分析に資するようにデータの加工を始めている自分がいる。これは自発的な研究熱による作用である。2017/7/17(月)

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