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1305. 夢の中でのモーツァルトの話から:円と鏡像関係


薄い雲に覆われた空。風が呼吸をしているかのように断続的に吹く。

外側の世界は今日もとても静かである。今朝はベッドから起き上がるか否かの時に、昨夜見た夢の鮮明な印象に包まれていた。

私は夢の中で、モーツァルトと会話をしていた。彼の話を四六時中聞いていただけだったので、それを会話と呼べるかどうかは疑わしい。

いずれにせよ、モーツァルトと出会い、そこで彼の話を直接聞く機会を得ていたことは確かだ。一体何の話を聞いていたのかというと、それは絵画に関するものだった。

正直なところ、音楽の話を聞くのではなく、絵画の創作方法について話を聞くことになろうとは、全く予期していないことだった。絵画の創作に関して、モーツァルトが説明していたのは「円」と「鏡像関係」に関するものだった。

私は、実際にモーツァルトが描いた絵を見せてもらう機会を得た。その絵は、広大な草原の中にたたずむ一本の木を描いていた。

その木には、春の太陽光が当たっており、黄色く輝いていた。モーツァルトの話によると、その木は自分の目に見えた向きとは逆に描いているということだった。

「実際に視覚に映る景色と真理を見通す眼に映る景色は「鏡像関係」になっている」ということをモーツァルトは私に説明し始めた。興味深くモーツァルトの話に耳を傾けていると、その絵画に描かれた木の先端部分が、太陽の方向に向かって空の中に溶け出していることに気づいた。

それにも何らかの意図があるのだろうが、私はそれについて聞くことをしなかった。モーツァルトがさらにしばらく話を続けていると、絵画の創作についてモーツァルト以上に造詣が深い人物がその場に現れた。

その時、モーツァルトがその人物について紹介をし始め、その人物はモーツァルトよりも16歳ほど年上であり、鏡像関係を活用した彼の作品をぜひ参考にしてほしい、ということを私に述べた。35歳でこの世を去ったはずのモーツァルトは、その時46歳だった。 鏡像関係についての話を終えると、モーツァルトは私の心の内を読んでくれたのか、木の先端が太陽の方向に向かって空に溶け出している箇所を指差しながら、それについて話を始めた。しかしその説明は、なぜ木が空に向かって溶け出しているのかではなく、太陽に関するものだった。

なにやら、事物を円として捉えると、その特性を正確に捉えることができるとのことであった。円は事物を定量的に分析することを可能とするのみならず、定性的な分析をも可能とする、ということをモーツァルトは熱心に語っていた。

この点についても、突然現れたその権威的な人物の方が詳しいらしく、モーツァルトは自分の説明の間中、その人物の顔色を伺いながら話を続けていた。だが、そこには権威に対して卑屈になるという姿はなく、自分の創作物に対してモーツァルトは強い自信を持っているようであった。

また、創作技術に関して、自分よりも優れた人がいれば積極的に意見を求めるという誠実な態度がそこにあった。結局、私はこちらからモーツァルトに何かを述べることは一度もなく、そこで夢から覚めた。 起床後、早朝の景色を眺めながら、円と鏡像関係についてぼんやりと考えていた。自己の世界とそれを取り巻く世界は円を描くように相互に影響を与え合っており、それが様々な「縁」が生まれる世界を作り出す。

そして、無数の縁が生まれる世界よりもさらに高次元の世界が存在し、その高次元の世界と鏡像的な関係を通して立ち現れているのが、私たちが生きる縁で満ち溢れた世界なのだ、という考えが、大海に一滴の水が落ちるかのように静かにぽつんと現れた。2017/7/15

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