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1214. マルチフラクタルトレンド除去変動解析と埴谷雄高著『死霊』


今朝は少しばかり早く起床したためか、午前中の仕事の合間を縫って、先ほどソファの上に腰掛けながら、しばらく目を閉じていた。およそ10分ほどであろうか。

目を閉じていると、夢の世界の入り口の前にたたずんでいるような感覚に包まれた。実際に、言葉にならないような映像が自分の脳裏に浮かんでおり、私はそうした映像の世界の中にいた。

子供と親が登場するような映像であり、その他の情景や一切のストーリーは不明である。あるところでふと目を開けた。

すると、目を閉じる前と同様に、書斎の中にはモーツァルトの協奏曲が静かに鳴り響いていた。今日は早朝から、楽曲の構造分析に非線形ダイナミクスの手法を活用した論文を五つほど読んでいた。

その中で、トレンド除去変動解析から派生した応用的な手法、「マルチフラクタルトレンド除去変動解析」という手法を度々目撃することになった。この手法については、これまで一度も目にしたことがなく、発達科学の領域において、この手法はまだそれほど活用されていないのではないかと思った。

この手法の全貌をすぐに理解することは難しかったが、今後の発達研究の際に活用出来るかもしれないという期待があった。そこで、先ほど読み進めていた論文の中で引用されていた、マルチフラクタルトレンド除去変動解析の解説に特化した物理学の論文を一つほどダウンロードした。 午前中にそれらの論文を読んでいると、昨日の作曲実践について思い出された。昨日は、少しばかり意図的に、五線譜上の音符の配置のさせ方を起伏に富む形にしようとしていた。

つまり、適度な変動性を伴うピンクノイズの波形をイメージしながら、うねるような音符の配置を意図していたということである。偉大な作曲家の曲を眺めてみると、読み進めていた論文の実証結果が明らかにしているように、曲の構造に適度な変動性が確保されていることがわかる。

そこで私も、いくつかの小節を通じて、変動性が保たれるような形で音符を配置した。しかし、私の技巧が不十分なため、曲を再生した時に、それほど心地の良い音として感じることはできなかった。

だがその後、何度か同様の実験を試みていると、心地の良い音を発する少数の節を生み出すことができた。ここでふと、昨日読んでいた非線形ダイナミクスを活用した楽曲分析の論文の中に書き留めていた、「科学的な作曲実践」を自分が試み始めていることに気づいた。

日々の生活の中で、科学的な探究に従事すればするほどに、バッハにせよ、ベートーヴェンにせよ、彼らは単なる作曲家ではなく、科学者であったとすら思えるようなことがある。彼らは科学的な精神を持った作曲家だったのだ。

それは、彼らが美を生み出すための体系を生み出すことに苦心し、科学的とも言える発想と方法をもってして、その体系の構築に打ち込んでいたことから明らかだろう。これは美的体系のみならず、思想体系にせよ、知識体系にせよ、同じことが言えるはずである。

そこにはある種、科学的な発想と探究プロセスが深く関係しているような気がしてならない。そして、そうした科学的な探究を促すのは、実存的なものだということは言うまでもない。 いくつか論文を読んだ後に、私は埴谷雄高著『死霊』を手に取り、この分厚い小説を読み始めた。これまでの続きとして、第三章「屋根裏部屋」のページを開き、食い入るようにそれを読み終えた。

この小説は私にとって、相変わらず得体の知れない魅力を持っている。登場人物たちの会話は、時に自分の考えを代弁することがあり、往々にして私の思考の遥か先の世界について語っているように思えることもある。

明日は、第四章「霧のなかで」を読み進めたいと思う。2017/6/24

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