今日は六時前に起床し、早朝から論文を三本ほど読み進めていた。それは現在履修している「タレントアセスメント」で取り上げられているものである。
最初の論文は、このコースを担当するスーザン・ニーセンとロブ・メイヤー教授が執筆したものであり、その次に目を通した論文は、二人の論文に対して建設的な批判が加えられたものである。
また、最後に読んだ論文は、その建設的な批判に対してさらに二人が意見を述べるというものであった。一連の論文を読みながら、いろいろなことを考えさせられた。
まずは内容として、それらの論文で扱われていたのは大学入学の選抜方法に関するものであり、これらの論文は重要な示唆を与えてくれる。高校時代のGPAや筆記試験などの旧態依然とした評価方法の信頼性と妥当性を科学的に検証し、「サンプルアプローチ」というユニークな方法を提唱していることが印象に残っている。
論文を読みながら、私たちの知性や能力、そしてモチベーションというものが、領域全般的なものではなく、領域固有的なものであるがゆえに、旧態依然とした選抜方法では随分と多くのことを見逃してしまうと改めて思った。
サンプルアプローチとは、例えば、心理学を専攻しようと志す高校生に対して、入学前に、実際に大学が提供する心理学のコースを模した学習機会を与え、そこでのパフォーマンスを評価するようなものを指す。
既存の選抜方法で課せられる各種のアセスメントは、知能検査のような領域全般型の特徴を帯びており、それでは領域固有に発揮される私たちの知性や能力を正しく測定することなどできない。
サンプルアプローチを導入するにあたっては、費用の問題も含め、色々と解決していかなければならない課題があることは確かだが、私たちの知性や能力、そしてモチベーションというものが本質的に領域固有な特質を持っていることを考えると、サンプルアプローチは理にかなっていると言えるだろう。
オランダでは、少しずつサンプルアプローチの考え方が広まっているようであり、その流れは欧州にも広がりつつある。三本の論文を読む限りでは、米国の教育界はまだサンプルアプローチをそれほど認知していないようである。
日本も大学入試の選抜方法が変革期に差し掛かっており、今後サンプルアプローチに対する認知が広まっていくのではないかと思っている。そして、サンプルアプローチが持つ発想と方法は、大学入学における選抜だけではなく、企業社会における選抜やパフォーマンス測定に重要だと思われる。 最後に、この論文を読みながら思ったのは、二人の論文が2017年に投稿されたばかりであるにもかかわらず、すでに建設的な批判が寄せられていることは非常に健全だということだった。論文で扱われているテーマが教育において重要であるがゆえに、また、論文の中で提唱されているアプローチが斬新なものであるがゆえに、建設的な批判が寄せられるというのは大切である。
そのような批判がなければ、科学的な知が新たに積み重ねられることも、新たな実践がなされることもないのだと強く思う。2017/5/18