昨日は、夕食後から「タレントアセスメント」で課せられている論文の執筆に取り掛かった。その前日に計画していたのは、この課題を昼食前から取り組み始め、午後から夕方まで文章を執筆するというものであった。
しかし、蓋を開けてみると、課題に取り組み始めたのは夕食後からだった。午前中も午後も、自分が読みたいと思う書籍を読んでいたため、そのようなことになった。
具体的には、イヴァン・イリッチの “Deschooling Society (1970)”とダイナミックシステム理論に関する“Dynamical Psychology: Complexity, Self-Organization and Mind (2009)”を読み続けていた。午前と午後を使って集中的に読書を行うことができたため、イリッチの書籍は初読が完了し、後者の書籍に関しても一読目が終わりそうである。 そうした読書を終えて、ようやく課題に取り組み始めた。今回の課題は、ルーワーデンという町にあるホテルマネジメントに特化した専門大学のアドミッションに関して、データ分析に基づいた助言を提供することである。
この学校のアドミッションを担当している二人の人物が、「タレントアセスメント」のコースの最初にゲストスピーカーとしてやってきて、ホテル業界の話やこの大学が提供するホテルマネジメントのプログラムについて色々と説明をしてくれた。
大変興味深い内容のプレゼンを聞きながら、世界には色々な職業があり、そうした職業に特化した学校があるのだと感心させられた。今回の課題は、この学校の学士過程に入学してくる生徒の選抜に関して、既存の評価手法のどこか優れており、どこに改善の余地があるのかを分析し、提言を行うというものである。
コースが始まる前に、担当講師のスーザン・ニーセンが、251名の志願者のデータを私たちに共有していた。昨日改めてそれを眺めてみると、分析しがいのある量であることに少々面食らったが、一つ一つの項目をつぶさに見ていくと、色々と発見があるものだ。
ホテルマネジメントに特化しているがゆえに、会計学の試験やホスピタリティの試験があることは興味深かった。大量に存在する評価項目の一つ一つに溺れてしまうと、何も分析ができないと思い、大きな視点を持ちながらデータを眺め、リサーチクエスチョンを立てた。
この学校は、数多くの試験を志願者に課しているのだが、中でも「モチベーションインタビュー」が最終評価に占める割合が50%もある。また、筆記試験の中にも、性格類型テストと合わせて、モチベーションの性質を測定するテストがある。
こうしたことを考えると、この学校は、志願者のモチベーションを重視していることがわかった。これはどの学校でもそうかもしれない。
ただし、私が注目をしていたのは、この学校が活用しているインタビューの質であり、モチベーションを測定するための筆記試験の質であった。「質」というのは、それらのインタビューや筆記試験の結果が、志願者が入学後に発揮する学業パフォーマンスとどれだけ結びついているのかの度合いを示す。
今回、この大学から私たちに依頼があったのは、既存の入学審査の評価手法が、入学者の学業パフォーマンスを適切に予測できているのかを調査してほしい、というものだった。その観点から、私は、この大学の入学審査で最も大きなウェイトを占める「モチベーション」という構成概念に着目し、それを測定しようとするインタビューと筆記試験の質に着目することにした。
手元にあるデータは、モチベーションを測定する筆記試験の四つの項目の結果とインタビューの総合評価、そして、入学後の最初の学年における成績評価、最初の学年における取得単位数、退学の有無である。
筆記試験の四つの項目とインタビューの総合評価を独立変数とし、後者三つを従属変数として分析をすることにした。私は統計学に明るくないので、古典的な統計手法を用いる際は、常に専門書が必要となる。
昨日も、専門書を片手に、基本的な概念をもう一度確認しながらデータを分析を進めていた。結局、私が分析したいことは、筆記試験の四つの項目とインタビューの総合評価が学業パフォーマンスを表す三つの指標を適切に予測するものなのか、ということである。
この問いに答えるためには、単純に回帰分析を活用しようと思う。そして、もう一つの問いとしては、筆記試験の四つの項目とインタビューの総合評価がどれだけの相関があるのか、ということである。
これは非常に早急な考え方だが、最初にこの大学の入学評価の仕組みを見たとき、モチベーションを筆記試験とインタビューの二つの手法で測る意味があるのか、ということに疑問を持っていた。
つまり、どちらか一方で十分なのではないか、という考えがあったのだ。おそらく、筆記試験で測ることのできるモチーベションの側面と、インタビューで測ることのできるモチーベションの側面が異なるということを前提に、これら二つの方法を採用しているのだろう。
四つの項目とインタビューの総合評価の相関関係を見ただけでは、二つの手法が同一のものを測定しているということが明らかにならないだろうが、とりあえず分析の手始めに、それらの相関関係を見てみることにする。
今回のデータ分析では、プログラミング言語のRを活用することになるが、この一年間でRを活用する機会が多かったため、今ではとても馴染みのある言語に感じるようになった。作曲に関する音楽言語もRのように親しみを感じられるようになる日が来ることを願う。2017/5/13