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1010.「実践書」について


午後からの仕事に取り掛かる前に、先ほど英国のアマゾンを通じて、四冊ほど作曲に関する書籍を購入した。厳密には、音楽理論に関する書籍が一冊ほど混じっているが、すべての書籍に共通するのはそれらが実践書であるということだ。

音楽理論に関するその書籍にも、音楽理論を体感として学べるようなエクササイズが盛り込まれている。また、作曲方法に関する三冊も、エクササイズが多数盛り込まれている。

さらに、そのうちの二冊は小・中学生が初めて作曲を学ぶためのテキストとして用いられるものだ。今回、私はあえてそうした書籍を購入した。

その背景には、私が作曲について学びたいわけではなく、作曲したいという強い思いがあるだろう。予想以上に書籍を吟味する時間がかかってしまったのも、作曲に関して不必要に細かい事柄が書かれていたり、作曲という行為を学術的に論じるような書籍を振るい落としていく必要があったからである。

興味深いのは、いつも私が専門書を選ぶときは真逆の基準を採用していることである。細かな点も含めて、いかに学術的に論じられた書籍なのかが、専門書の購入の際に大きな基準となっている。

今回の書籍の購入に際してそうした基準を採用しなかったのも、本当に自分が曲を生み出すというただ一点だけに焦点を向けているからだろう。作曲に関して様々な音楽知識が必要であり、それが作曲をさらに深いものにしていくことは十分に理解している。

それは自分の研究領域や実務領域においても等しく当てはまる。しかし、今回は、とにかく自分の内側にある思念や感覚を的確に表現するような音楽をいかに生み出していくかが最大の焦点だった。

それには、理論に先立つぐらいの実践が必要であった。今回購入した四冊の書籍はどれも、理論的な解説の直後にエクササイズが盛り込まれている。

その他にも様々な書籍を吟味していたのだが、それら以外のものは、「古典作曲家と商業作曲家の違いとは?」「作曲家として活動するためには?」「作曲の歴史」など、私の焦点をぼやかすような内容が必ずどこかに盛り込まれていた。

ページの最初から最後まで自分の焦点をぼやかさない書籍が、今回購入した四冊だ。 これは私がプログラミング言語のRを学んだ際にも、そして、非線形ダイナミクスやダイナミックシステムアプローチの研究手法を学んだ際にも痛感したのだが、手を動かしながら学ぶことは非常に大切である。

私はあまり「実践的」という言葉や「実践書」という言葉が好きではないのだが、体験を通じて学んでいくことは学習をより深いものとするのは間違いない。私がそれらの言葉を好まないのは、世間一般の風潮として、実践を過度に重視し、理論を軽視するようなことが頻繁に見られるからである。

学習で最も重要なのは、実践即理論であり、理論即実践という考え方なのではないだろうか。購入した書籍を読み進める時は、エクササイズを一つも飛ばすことなく、「実践即理論・理論即実践」の精神を持ち続けたいと思う。

昨日ダウンロードした作曲専用ソフトを活用しながらそれらのエクササイズを行い、実際に手を動かしながら、エクササイズを通じて生み出された音を自分の耳で聴くということを心がけたいと思う。 今回の一件は、六月の初旬に刊行される第二弾の書籍にも関係する話だとふと思った。第二弾の書籍は、単純にこれまでに紹介されていない発達理論の枠組みを提示するだけではなく、各章の合間合間に合計で18個ほどのエクササイズを設けている。

そうしたエクササイズを設けたのは、理論と実践を共に重視する「実践即理論・理論即実践」の精神が、ここ最近の私の中で強くなっていたからなのかもしれない。新たな概念や理論を学ぶことは、私たちの認識と行動を必ず変えるはずなのだが、それをより促進するためには、新たな概念や理論を通じたエクササイズを行うことが重要だという考え方が、特に今回の書籍の中で色濃く出ていたように思う。

Rにせよ、非線形ダイナミクスやダイナミックシステムアプローチの研究手法にせよ、作曲にせよ、そして英語やオランダ語にせよ、それらは全て私自身が実際の体験を通じて学んできたものであるということを、自分で執筆した書籍から逆に学ばせてもらったように思う。

とりわけ発達科学の知見は、成長・発達支援という実務と直結するべきものであるがゆえに、近い将来第三弾の書籍を執筆する際にも、ぜひとも「実践即理論・理論即実践」の精神が具現化した内容にしたい。2017/4/29

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