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1008. 逆周りから得られた気づき


今日のような日を春と呼ばずになんと呼ぶのだろうか。フローニンゲンもようやく春に入ったようだ。

確かに、朝晩はまだ暖房をつけている。しかし、今日はとても暖かい日曜日だ。

午前中の仕事を済ませ、私はランニングに出かけた。今日は自宅を出発する前に、なぜだかいつも走るコースを逆周りに走ってみようと思った。

書斎の窓から目の前の通りを眺めてみると、街路樹の間に立てかけられている広告が以前のものと変わっており、モーツァルトの『レクイエム』のコンサートの宣伝がされていた。この広告は週替わりぐらいで変化することに以前から気付いていた。

明確なつながりを見出すことはできないのだが、『レクイエム』のコンサートの表示板を見て、今日はいつもと逆周りにランニングしようと思い立った。いつものコースを逆周りに走り始めると、頭の中の感覚がいつもと異なることに気づいた。

これは微細な差異だが、見逃しようのないものだった。また身体的にも、いつものコースを走るときは重心が右に少しばかり傾いているのに対して、逆周りに走っている今日の感覚は重心が左に寄っていることを捉えていた。

走っている最中にまず考えていたのは、午前中の仕事についてであった。午前中はドゥルーズの哲学書を読み、そこから非線形ダイナミクスの専門書に取り掛かっていた。

前者の書籍は、発達現象に潜む差異に関する理解を深めるための洞察をもたらしてくれるものであり、後者の書籍は、発達現象のプロセスやメカニズムを解明する手法に関する理解を深める役割を果たす。両者は哲学と応用数学というように、分野が異なるのだが、どちらも私の専門である人間発達と密接に関係している。

ドゥルーズの難解な哲学書から非線形ダイナミクスの専門書に移った時、不思議な感覚があった。いつも以上に数学概念が明瞭なものとして知覚されたのだ。

応用数学の概念が薄いイメージとともに内側に入り込んでくる感覚であった。こうした感覚をもたらした要因が、果たして哲学書にあるのか、あるいはドゥルーズの哲学書という個別の書籍にあるのかは定かではないが、良質な哲学書には概念に対する感覚を鋭敏にする作用があるような気がしている。

ここから実験的に、これから毎日最初に読む書籍を哲学書とし、次に非線形ダイナミクスの書籍に取り掛かるという流れを作りたい。そのあとに、発達心理学やその他の関心事項に関する書籍を読むように心がけたいと思う。

今日はドゥルーズからカントに移行しなくて正解であった。読書にも大きな変動性を持たせ、哲学書を起点とし、そこから異なる分野の書籍に大きく移るという振り幅が大切だ。

そのようなことをランニングの途中で考えていると、ある場所に差し掛かった時、私は思わず後ろを振り返った。何のためかというと、ある四階建ぐらいのマンショの壁の真ん中に大きな絵画が描かれており、それを見るためである。

今日はいつもと逆周りに走っているため、その絵を見るためには振り返る必要があったのだ。この絵はとても不思議な内容を持っている。

その内容は、宇宙空間の中に三枚の板が描かれており、それぞれの板から惑星が飛び出しているような姿を捉えているというものだ。いつもは大抵足を止めることなく走りながらこの絵を眺めているため、細部は不明なのだが、いつもこの絵に見入ってしまう自分がいるのだ。

今の私が思っている以上に深い意味を持つ絵なのだと思う。次回のランニングの際は、少し立ち止まってこの絵を鑑賞したい。 ランニングから自宅に戻ってくると、最後に考えを巡らせていたのは、思念や感覚の持続時間についてである。上記の事柄は全てランニング中に考えていたことであり、感じていたことであった。

それらがランニングから戻ってきて一時間後にもまだ消えずに自分の内側に残っていた、ということに注目していた。それに対して、日々の生活の中でよくあるのは、これは重要に違いないという閃きが数分後にはどこかに消え去っているという現象だ。

その閃きは、明らかに自分にとって重要なものであるはずなのに、なぜだかそれがすぐに消え去ってしまうことがあるのだ。そこから思ったのは、単純に内側に生じる現象が自分にとって重要か否かがその持続時間に影響を与えるわけではないということだった。

何か他に決定要因があるようなのだ。上記で書き留めていた事柄は、極めて些細なことだと思うが、そうした思念や感覚が自分の内側に長く留まっていたということは、とても興味深いことだった。

そしておそらく、それらの一見些細に思えることの方が自分にとって重要なことなのであり、それらの内側に長く留まることを外側に形として残していくことが大切なのだと思った。2017/4/29

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