昼食を摂っている最中、ここ最近得られる気づきや発見が、これまでのものと自発的かつ有機的につながることが極めて多いということに驚いていた。先ほどもそのような驚きの瞬間に出くわした。
今朝から再び、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの“Difference and Repetition (1968)”を読み始めた。この書籍は、タイトル通り、差異と反復という現象を考察するものである。
今朝本書を読み、午前中の外出を経て、昼食時に再び昨日の作曲について考えが及んでいた時に、突如として、差異と反復という現象は作曲において極めて重要な鍵を握ることに気づいたのだ。
昨日、作曲をしながらとても不思議に思っていたのは、仮に一つの小節内の音符の配列と次の小節内の音符の配列が全く同じであったとしても、それぞれが持つ意味が全く違うということであった。つまり、全く同じ反復に見えても、そこには差異が潜んでいるのだ。
言い換えると、反復の中には常に差異があり、反復によって差異が生まれ、差異によって再び新たな反復が生まれるのではないか、ということである。作曲に関するウェブサイトをあれこれと調べていると、曲を生み出していく鍵は、差異に着目するというよりも、反復に着目し、反復の連続性の中でいかに差異を作り出していくかにあるのではないか、ということに気づいた。
ドゥルーズの書籍の中に書き込んだメモを見ると、反復性というのはダイナミックシステムの核にある概念であり、ダイナミックシステムは絶えず自発的に反復運動を行いながら差異を生み出していく、ということが記されている。
まさに、楽曲というのも一つのダイナミックシステムなのだ。それは単純に、演奏者の精神状態や感情状態、演奏環境によって楽曲の音色が変わるという意味でそのように述べているわけではない。
ダイナミックシステムの核にある反復性と差異性を備えているがゆえに、楽曲はダイナミックシステムなのである。さらに書き込みの続きを見返してみると、楽曲には自己組織化(self-organization)の作用が絶えず働いている、というメモが残されている。
繰り返しになるが、一つの反復が別の反復を引き起こし、その反復が差異を引き起こし、その一つの差異が別の差異や反復を外部からの強制力なしに自発的に生み出していく姿は、自己組織化に他ならないだろう。
音楽を通じてダイナミックシステムの特性を捉え直すこと、ダイナミックシステムの特性から音楽を捉え直すことは、私に多くのことを教えてくれる。本書の序章でドゥルーズが言及しているように、科学と芸術から哲学を捉え直し、哲学から科学と芸術を捉え直すという営みは、今の私にとって非常に大切な実践のように思われる。 一つの楽曲を構成するためには、反復と差異が不可欠であり、楽曲が本質的にダイナミックシステムであるならば、私がこれまで探究してきたダイナミックシステムアプローチや非線形ダイナミクスの手法と観点は、楽曲の研究と創出に非常に有益であると改めて思った。
特に、反復の構造上の差異を明らかにする「再帰定量化解析(RQA)」は優れた手法であると瞬間的に閃く。一年目のプログラムが終了する六月の中旬から、楽曲の反復と差異の構造を分析する研究に本格的に着手したいと思う。
この研究を通じて、楽曲の発達過程を捉えるのみならず、そこから人間の発達現象に関する新たな洞察を得たいと思う。2017/4/24