ウィーンから三時間弱の時間ほど列車に揺られ、ザルツブルグに到着した。列車がザルツブルグ駅に到着する少し前から、小高い山の上にあるホーエンザルツブルク城が見えた。
また、その遥か先にはアルプスの山々を眺めることができた。山頂が雪で白く輝いていた。
予定よりも幾分早くザルツブルグに到着したため、ホテルのチェックインを済ませてから休憩をとることなしに、すぐさま街へ散策に出かけた。まずは、ホテルから歩いて近くにある明日の学会の会場を下見に行った。
非線形ダイナミクスに関する明日の学会は、ザルツブルグ大学の医学部がある建物で行われる。学会は明日の朝九時から開始されるため、当日の朝に慌てないためにも建物の場所を確認しておいた。
ホテルから会場までは、歩いて10分ほどの距離であり、ザルツァハ川という大きな川の上を架けている橋を渡ってすぐのところに会場があった。ザルツブルグの街並みは、ウィーンに比べて自然も多く、私にとってはザルツブルグの方が心が落ち着く。
ただし、この街も意外と車の数が多く、街の中心部は少しばかり騒がしい。私がこれまで訪れた世界の街の数などたかが知れているが、街の安全度に対して、これまでの経験で培われた嗅覚のようなものが私には備わっているように思う。
駅から少し歩いてみて気づいたが、物乞いの姿が辺りに散見され、安全だと明確に言えないような雰囲気が漂っていた。実際に、私の身体の外膜には警戒心のオーラが張り巡らされたままであった。
そのような警戒心を持ちながら、ザルツブルグの街を歩いていた。ただし、ザルツァハ川沿いにあるウォーキングロードはとても心地が良かった。
遠くにアルプスの山々を眺めながら歩いている時は、ザルツブルグの魅力を実感した。その足で、モーツァルトが生誕した場所を訪れた。
残念ながら、今ではもうその辺りは完全に観光地と化してしまい、現代風の店が並び、人も多かった。とりあえずモーツァルトが生まれた建物の外観だけを眺め、オランダに戻る前日に、建物の中を見学するかどうかはまた考えようと思う。
モーツァルトの生誕地を確認し、私は再びザルツブルグの街中を歩き出した。もう一度、ザルツァハ川の上を架ける橋を渡り、ザルツブルク・モーツァルテウム大学という音楽大学へ足を運んだ。
ヘルベルト・フォン・カラヤンなどを卒業生に擁しているこの大学は、世界的にも有名な音楽大学だということを聞いている。私は世界の主要都市を訪れた際には、時間があれば必ず、その都市を代表する大学に足を運ぶことにしている。
今回も、私は決してモーツァルテウム大学の学生ではないが、学生を装って建物の中に入ってみた。私が入った建物は、外観から内装までとても綺麗であり、中は非常に開放的であった。
一階に図書館があり、上の階では、ガラス張りの窓を通じて、ある生徒が一人の教授からピアノの指導を受けている様子が伺えた。音楽を探究する上では、この大学、そして、ザルツブルグという街は非常に恵まれた環境なのだろうと思った。
大学を後にし、ホテルの近くあるアジア料理店で夕食を摂り、ホテルに早めに戻りゆっくりすることにした。明日からの学会が今からとても楽しみだ。2017/4/5