今日の午前中に行われたサスキア・クネン先生とのミーティングでは、具体的に、論文の中で取り上げる「状態空間グリッド(SSG)」について意見交換をしていた。多岐にわたる項目についてディスカッションしていたため、備忘録も兼ねて、それらのポイントを書き留めておきたい。 まずは、 “Results”のセクションの冒頭に、私が教師と学習者の行動をカテゴリー分類した後に割り当てた数字が、それぞれどんな種類の行動を意味するのかを説明したおいた方がいいだろう。当初は、 “Discussion”のセクションでそれを行う予定だったが、論文の読者からしてみると、例えば、(teacher, learner)=(4, 6)が何を意味するのかを分かっておいた方が、分析結果を理解しやすいだろう。
そのため、このセクションの初めに、教師と学習者のそれぞれが持つ七つの行動分類の数字と意味を、簡潔な表の形式にまとめておきたい。 次に、状態空間グリッドの大きな特徴である、ダイナミックシステムの二つの構成要素(変数)の挙動を状態空間上で視覚的に捉えるという方法を活用するだけではなく、具体的にどのような基準を基にして、各クラスの状態空間の中で、教師と学習者の行動の組み合わせのどれがアトラクターだと言えるのかを記述しておきたい。
ここでは、クネン先生とのミーティングの前に、早朝自宅で調べていたように、アトラクターと認定するための基準について紹介し、その基準に照らし合わせて、教師と学習者の行動のどの組み合わせがアトラクターなのかを明示しておきたい。 今日のクネン先生とのミーティングで大きな発見があったのは、あるアトラクターの状態がクラスを追うごとに強まっているということであった。アトラクターの発達の推移に関しては、私の中で抜け漏れていた観点であり、研究で取り上げるオンライン学習の最終回のクラスにとても強いアトラクターがあるということだけが私の認識の中にあったのだ。
クネン先生からの指摘のおかげで、最終回のクラスで見せていた強いアトラクターは、実は最初のクラスの時に小さな形で出現しており、クラスの回数が重なるごとに、その強さを増していることが視覚的にわかったのだ。
そこで、私は、アトラクターの強さを測る二つの指標を取り上げ、クラスを追うごとにどのような変化率を持っているのかを表にまとめるだけではなく、グラフ化しておきたいと思った。
アトラクターの変化に関しては、クラスの回数が合計で五回ほどしかないため、何も工夫を施さなければ、どのような種類のノイズが発せられているのかを特定する「トレンド除去変動解析(Detrended Fluctuation Analysis:DFA)」や「標準化分散解析(Standardized Dispersion Analysis:SDA)」などを使うことはできない。
そのため、非常に簡易的な方法であるが、回帰直線をグラフの中に描いておきたいと思う。ただし、将来の研究に向けて、クネン先生からまた別の指摘があった。
確かに、今回取り上げた二つの指標を用いてアトラクターの強度を図るのであれば、データポイントは五つしかないため、DFAやSDAを活用することはできない。しかしながら、仮に別の指標を用いてアトラクターの強度を図ることができるのであれば、全クラスを通じて得られた229個の会話のやり取りをデータセットにし、DFAやSDAを用いることができるのではないか、という助言をもらった。
これは非常に面白いアイデアだと思った。早朝に私が考えていたアイデアをさらに補足してくれるものであり、今後の研究の中で、是非ともそのアイデアを採用してみたいと思う。2017/3/20