今日の午前中に行われた、論文アドバイザーのサスキア・クネン教授とのミーティングについて、また少し考えを巡らせていた。ミーティングの最初に、今後の私の進路について話をしたことを書き留めていたように思う。
その後に続く本題では、私が先日送った論文の “Results”セクションに関して意見交換をしていた。昨年の九月に行われた、クネン先生との最初のミーティングがとても懐かしく、当初の研究案は、ダイナミックシステムアプローチの真骨頂である、理論モデルの構築から数式モデルを構築し、数式モデルを活用したコンピューターシミレーションを予定していた。
ダイナミックシステムアプローチに関する学びを深めるに連れて、確かにそれがダイナミックシステムアプローチの核なのは間違いない。しかし、ダイナミックシステムアプローチは、発達現象を探究するそれ以外のアプローチを多く持っている。
それは例えば、今の私の研究で採用している「状態空間グリッド(SSG)」というソフトウェアを活用したアプローチである。このアプローチについては、確か私がロサンゼルスに在住している時に初めて出会ったものであり、その時以来、私の頭の片隅にこの手法があった。
だが、フローニンゲン大学に来るまで、この手法を実際に手を動かしながら活用したことがなかったため、この手法がどのような発達現象をどれほどまでに明らかにしてくれるのかということをよく理解していなかった。
クネン先生が前の学期に担当していた「複雑性と人間発達」というコースを履修することによって、私はこの手法について理解を深めることになった。今でも覚えているのは、第二回目のクラスでSSGを用いた実習があった時、確かにこの手法は興味深いものだと思ったが、果たして自分の研究にどれだけ活用できるのか懐疑的な思いを持っていたのだ。
また、その後に続くクラスの中で、数学的に厳密なその他の手法を数多く学ぶことによって、そちらの方に関心が寄っていたのは確かである。しかし、クネン先生から、今回の研究でSSGを活用してみることを勧められ、実際に活用してみて、得るものが非常に多かったように思う。
SSGは、近年徐々に発達現象の研究に適用されつつある、中でも、私の知る限り、三人の研究者がとりわけ重要な仕事をしている。それは、SSGの創始者であるマーク・レヴィス、レヴィスの下で研究をしていたトム・ホルンシュタイン、そして、レヴィスの妻でもあり、クネン先生と親交のあるイサベラ・グラニックである。
彼ら三人の論文の中で、SSGを活用しているものに全て目を通したところ、SSGが持つ可能性について目を開かされるものがあった。確かに、非線形ダイナミクスの諸々の手法に比べて、その背後に精緻な数式や数学の理論があるわけではない。
実際に、SSGを活用する際に、難解な数式を理解する必要などなく、「Σ」の記号の意味さえわかれば、SSGが出力する各指標がどのように算出されたのかを理解することができる。
今週から来週にかけて、上記三名の研究者の論文とホルンシュタインが執筆したSSGに関する専門書 “ State space grids: Depicting dynamics across development (2013)”を集中的に読み、この手法に関する理解を短期間のうちにできる限り深めたいと思う。2017/3/20