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813. 書くこと・考えること・学ぶこと


昨夜と同様に、今朝は午前中から、研究データに対して状態空間分析を適用していた。状態空間分析を行うためのソフトウェアは、「State Space Grids (SSG)」と呼ばれるものであり、この十年以内において、幾つかの論文がこの手法を用いて発達研究を行っている。

このソフトウェアは、元来、マーク・レヴィスとイサベル・グラニックいう発達科学者が共同開発したものである。イサベル・グラニックは、マーク・レヴィスの妻でもあり、なおかつ、私の論文アドバイザーのサスキア・クネン先生とも親交が深い。

そのため、彼女と一度も会ったことがないにもかかわらず、グラニック教授はどこか近しい存在のような気がするのだ。また、グラニックは、親子間のインタラクションに対して、このソフトウェアを始めて適用した研究を行ったことでも知られている。

レヴィスとグラニックは、ダイナミックシステムアプローチを発達研究に活用した重鎮のような存在であり、もう少し若手の研究者であれば、トム・ホルンシュタインというカナダのクイーンズ大学に在籍している教授が、状態空間分析を活用した研究で有名である。

数年前になるが、まだポール・ヴァン・ギアート教授がフローニンゲン大学から正式に退職する前に、ホルンシュタインを含め、状態空間分析を発達研究に適用することを専門とした研究者をフローニンゲン大学に招いて、ワークショップを開催したことがあるという話をクネン先生から聞いたことがある。

そのため、ホルンシュタイン教授とも面識はないのだが、とても近しい感じがするから不思議である。ある研究者が近しい存在と感じることは以外と重要であり、そうした親近感は彼らの研究論文により深く入っていくことを可能にしてくれる——同時に、盲点を生み出すかもしれないが——。

これは、ある書籍の著者と面識がある場合に起こるような現象に似ているかもしれない。ある書籍の著者と面識がある場合、その著者が執筆した書籍に関する理解がより深まる経験をしたことはないだろうか。

そうしたことが象徴するように、論文や書籍の執筆者に対する親近感のようなものは、その内容理解を助けるような働きがあるのだ。 しばらくSSGを研究データに適用したところで、ホルンシュタインが執筆した “State space grids: Depicting dynamics acorss development (2013)”という書籍に目を通した。この専門書は、状態空間分析に関する説明が豊富であり、ソフトウェアの使い方についても非常に丁寧に解説しているため、SSGを活用した研究を行う際には必須の文献だと思う。

この書籍を参考にしながら、研究論文の “Method”の章を書き進めていた。いつものように、慎重に語彙を選択しながら、簡潔かつ明瞭な文章を執筆していく作業はやはり楽しい。

「楽しい」という感情表現は少し稚拙な印象を与えるが、学術論文の中で文章を少しずつ執筆していく作業は、純粋に楽しさの感情を私にもたらす。午前中の執筆作業において、結局それほどの分量を書き上げることはできなかったのだが、それでも着実に論文が一歩前に進んだことは確かだ。

昨夜突如として立てた誓いがある。それは大袈裟なものでは決してなく、日本語で何かしらの日記を毎日書き留め、英語で学術論文の一部を毎日何かしら執筆するということである。とても小さな誓いなのだが、それは私にとって非常に重要なものに思えた。

昨夜、ノートに書き殴るようにして立てたこの誓いは、書くこと・考えること・学ぶことが決して切り離せないものであるという私の考えを象徴しているかのようであった。2017/3/8

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