午前と午後の仕事がひと段落ついたため、夕方からは、これまでなかなか着手できなかった探究領域を少しずつ開拓し始めることができた。一つには、現在探究しているダイナミックシステムアプローチや非線形ダイナミクスの手法とは少し異なり、純粋に時系列データから将来予測を行うための理論や方法について学ぶことである。
このテーマについては、私にとって馴染みのあるプログラミング言語のRを用いて行うことができるため、手を動かしながら探究がしやすいという利点がある。具体的に参考にしていたテキストは、”Practical time series forcasting with R (2016)“と “Introductory time series with R (2009)”である。
後者の書籍は、Springerという出版社のものであり、この出版社は非常に専門的なテキストを世に送り出している印象がある。実際に、前者の書籍に比べて、後者の方が難解であるため、最初に取りかかるべきテキストは前者のものだと判断した。
時系列データの解析と予測に馴染みのない者にとっても、前者のテキストは格好の入門書だと思う。とにかく説明が明瞭であり、なおかつ、実践的な演習も組み込まれているため、独学で学習を進めていきやすい作りになっている。
このテキストを数章読み続けて、本日の探究にかける時間がまだ余っていたので、その次に、ネットワーク科学のテキストを紐解くことにした。フローニンゲン大学で現在私が所属しているプログラムのコーディネーターを務めるルート・ハータイ教授のある論文を読んで以降、「ダイナミックネットワークアプローチ」というネットワーク科学と複雑性科学の知見が組み合わさった手法について関心を強く持ち続けていた。
というのも、人間の知性や能力の発達を探究する際に、それらをダイナミックなシステムとみなすだけではなく、そこからシステムの構成要素間のネットワーク関係を分析していきたいという思いが日増しに強くなっていからである。
こうした探究を行うためには、ネットワーク科学の知見が不可欠なのだ。本格的にネットワーク科学の領域を探究し始めるのは、今年の九月からと予定していたが、そこまで待つのではなく、時間をうまく作りながら、少しずつ独学で探究を進めていこうと思ったのである。
実際に、今日の夕食後から、先日購入した “Netowork sicence (2016)”を読み進めることにした。このテキストは、私の好きな出版社の一つであるケンブリッジ大学出版のものである。
ケンブリッジ大学出版のテキストは、どれも内容が充実しているという印象を私は持っており、本書も非常に中身が濃いい。同時に、本書はアメリカの大学で用いられる象徴的なテキストと言ってもいいような作りになっており、分厚いながらも、イラストを含め、解説がわかりやすくとても充実している。
著者のアルバート・ラズロー・バラバシは、理論物理学者であり、ネットワーク科学の領域において非常に著名な研究者である。本日から、本書の章立てに沿いながら、少しずつネットワーク科学の知見に親しんでいきたい。
とにかく、自分の知性発達科学の研究に応用することを目的にしながら本書を読むことが大切であり、知性や能力の構成要素や組織における個人を、ネットワークの構成要素と常に見立てながら、本書の知見を自分の中に取り入れていこうと思う。
発達科学のみならず、時系列データの分析にせよ、ネットワーク科学にせよ、それらをより深く学びたいという思いを抑えることが全くできない。完全に自己制御が効かなくなっていると言ってもいいだろう。
もはや自分がどこに向かおうとしているのかも分からなければ、そのようなことを考える必要すらも感じなくなってきている。とにかく日々の探究を、発達現象に関する事柄で埋め尽くしたいと思う。2017/3/3