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768. オランダの大学院における成績評価の厳しさ


以前から少し気になっていたのだが、なぜオランダの大学において退学率が高いのかがわかったような気がした。詳しい統計データは覚えていないのだが、確か日本の大学の中途退学率は、数パーセントからせいぜい一割だったように思う。

一方、オランダの大学においては、その率が三割に到達する。オランダの大学は、基本的に学費は極めて安く、経済的な理由で退学をするというよりも、大学で要求される学術レベルについていくことができず、単位を取得できないということが大きな理由になっているらしい。

フローニンゲン大学に所属してみて、私もこの事情を痛切に感じている。本当に単位の取得が容易ではないのだ。

幸いにして、これまでの学期の中で単位を取得できなかったことはないのだが、当初想定していたのとは大きく違う状況に今の私は置かれている。フローニンゲン大学に来る前に、0から10の成績尺度のうち、平均が9以上であれば「最優等(summa cum laude)」が授与され、平均が8以上であれば「優等(cum laude)」が授与される形で卒業することができるということを聞いていた。

私は、四年前に米国の大学院へ留学したのと同じような気持ちでフローニンゲン大学に進学していたため、当初は8以上の成績を収めることは簡単であろうと高を括っていた。実際に各コースの試験を受け、成績結果が開示されるたびに、8以上の成績を取得することは非常に難しいことに気づかされる。

これまでの私の成績は、7が最高であり、前回のコースでは6の成績が付された。そもそも、日本の大学に進学した時から、試験で好成績を取ることができない特性を自分は持っていることに気づかされていた。

逆に、米国の大学院で経験したように、自分が取り上げたいと思うテーマについて、自由にペーパーを書くという形式の方が高い評価を自分は受けるということを知っていた。そのため、試験を課してくるフローニンゲン大学で、良い成績が収められていないことはそれほど驚くに値しない。

だが、それにしても成績評価が大変厳しく、単位取得が困難であるというオランダの大学事情を突きつけられたような気がしている。一方で、さらに興味深いのは、このように単位取得が難しいにもかかわらず、フローニンゲン大学の学生たちは、さらに厳しい成績評価を求めているようなのだ。

一週間ほど前、大学から送られてきたメールを見ると、それは学生が大学を評価するレポートであり、「試験をもっと難しいものにしてくれ」という要求が学生から多々あったそうだ。学生側の意識も非常に高く、少しばかり感心させられた。

現在履修中の「複雑性とタレントディベロップメント」というコースの中で、グループワークを共にしているドイツ人のフランは、フローニンゲン大学の学部から上がってきたばかりにもかかわらず、心理学的な発想や研究手法に関して随分と鍛えられているという印象を私に与えた。

その背景には、単位取得の厳しいコースワークを学部時代に三年間——オランダの学士プログラムは基本的に三年間——にわたって継続させてきたことがあるのだろうと思った。 フローニンゲン大学でのこれまでの私の成績はあまり良いものではなく、今後博士課程へ進学する可能性を考えると、悠長なことを言っていられない。実際に、ここ数日間、研究者としての今後を少しばかり考えていた。

今の私は、研究のみならず、知性発達科学の知見を活用したコンサルティングやコーチングの実務にも携わっており、そちらの活動を今後も継続していきたいと思っている。同時に、人間の発達をより深く探究するためにも、博士課程へ進学したいという思いも持っている。

理想としては、足を踏み入れておきたい専門分野があと少しあるため、それらに関する修士号を二、三取得してから博士課程へ進学したいと考えている。今のところ、米国の大学院かフローニンゲン大学で博士号を取得したいという思いが強くある。

フローニンゲン大学で博士号を取得する可能性の目を潰さないためにも、コースワークの成績があまり良いものではなかったとしても、とにかく査読付き論文を今年の間に一、二本執筆するという、今の自分にできることを着実に行いたい。2017/2/22

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