昨日の「複雑性科学とタレントディベロップメント」のコースを通じて、論文の読み方について再考を迫られるような思いになった。
このコースは通常のものよりも時間が長く、三時間にわたって行われることになっている。前半の一時間は担当教授からのレクチャーに当てられており、次の一時間は二人一組か少人数のグループワークに当てられている。
最初のレクチャーは全て英語で行われるが、グループワークからは英語かオランダ語を選択することができる。私は英語のグループを選択し、昨日は四人ほどの受講者が英語のグループを選択していた。
このコースはマライン・ヴァン・ダイク教授とラルフ・コックス教授の二人が担当しているため、グループワークでの課題をこなした後、各教授がオランダ語と英語のグループがいる部屋を訪れ、最後の一時間は教授を交えてディスカッションをするという構成になっている。
今回のグループワークの課題は、生得主義を批判する経験主義者の主張を実証結果を引き合いに出しながら批判するという論文を取り上げ、四つの質問に答えていくものであった。事前に一読した際に、著者の主張の大枠を把握していたつもりなのだが、いざ課題に取り組んでみると、自分の読みが相当に浅いことがわかった。
課題の焦点は、経験主義者が生得主義を批判する際に代表的に用いる六つの論拠に対する著者の批判的見解の内容を掴み、その著者の主張に対してさらに私たちが肯定的・否定的な見解を独自に展開していくことにあった。
また、著者の見解を実証研究で明らかにするためにはどのような実験を行うことができるのか、という提案なども考えさせられる課題となっている。
二人一組でこの課題に取り組むこともできたのだが、今回は英語のグループは人数が少なかったため、同じプログラムに属するインドネシア人のタタ、「複雑性と人間発達」のコースで知り合いになったオランダ人のピーター、そして二月から発達心理学の修士課程に在籍することになったドイツ人のフランの四人でこの課題に取り組むことにした。
グループワークに取り組んでみて気づいたのは、私を除く三人がこの難解な論文を非常によく理解しているということであった。特に、論文の構造や論理の流れを適切に把握している姿を見て、背筋が正されるような思いになった。
著者の主張は何であり、それをどのような論理展開でサポートし、具体的にどのような事例や実証結果を挙げているのか、ということを意識しながら論文を読むことはとても基本的なのだが、どうも私はそうした基本を蔑ろにする癖があるようだ。
いかなる学術論文を読む際にも、論文の基本的な構造と流れを明確に意識しながら読み進めていくことが必要になるだろう。構造を把握しながら文書を読み進めていくと、著者が次に何を言おうとしているのかを予測することが可能になる。
こうした予測は文章をより容易にかつ深く読むことを可能にしてくれる。さらには、このように構造を紐解きながら読み進めた論文の内容というのは、記憶に残りやすく、自分の知識体系をさらに高度なものにするための血肉化された資材となりうるのだと思う。
今日から改めて、論文の読み方に注意をしていく必要がある。2017/2/9