今日の午前中に行われたクネン先生とのミーティングは、新年早々のものであるにもかかわらず、とても密度が濃く、今後の研究を大きく推進させてくれるものであった。
支度に要する時間がいつもよりかかってしまい、先生の研究室に向かう最中に通るノーダープラントソン公園を少しばかり小走りしていた。雪道と化した公園を抜け、社会科学のキャンパスに到着し、無事に定刻通りに先生の研究室のドアを叩いた。
先生の研究室に入り、挨拶を交わすと、まずはお互いの年末年始の話となった。私はもちろん日本に一時帰国した話をし、先生はフローニンゲンの北部に位置する島に訪れた話をしてくれた。
その後、先生に日本茶の手土産を渡し、早速私の研究に関する話を行った。実際に修士論文を提出するのは、五ヶ月後のことなのだが、先生の助言と私の意向もあり、昨年の終わりから少しずつ論文を執筆し始めていた。
具体的には、論文の構成を練り、特にイントロダクションと研究手法に関するセクションを書き始めていたのである。まさに今日添削をしていただいたのは、イントロダクションと研究手法の前半部分である。
論文提案書を執筆する段階から、この提案書に記載する内容を論文のイントロダクションに活用しようという算段であったため、イントロダクションに関しては添削される箇所が何もなかった。また、研究手法の前半部分に関しても、先生から修正されるような箇所はほとんどなかった。
そのため、これから執筆していく予定の箇所について先生に助言を求めた。具体的には、イントロダクションから研究手法のセクションへの橋渡しとなる箇所である。
今のところの構成案では、イントロダクションの後に、まずは成人教育に対してダイナミックシステムアプローチを活用している先行研究について言及する予定である。その中で、ダイナミックシステムアプローチを適用することが、なぜ成人教育の研究で有益なのかを説明したい。
それを受けて、今回の研究の核となる幾つかの概念と理論を説明しようと思う。具体的には、成人学習のプロセスにおいて不可避な現象である「変動性」について言及し、今回の研究における主たる定量化手法であるカート・フィッシャーのダイナミックスキル理論について説明をするつもりである。
それらの説明を受けて、現在の成人教育の研究では何が盲点となっているのかを指摘し、まだ研究がそれほど進んでいない観点について言及したい。そうした説明を行ってから、仮説とリサーチクエスチョンを展開する予定である。
今回の私の研究は、理論的な側面とデータ解析の側面が半々ぐらいであるため、仮説とリサーチクエスチョンのところまでで、おおよそ8-10ページぐらいの分量を目安に執筆すると良い、とクネン先生から助言を得た。
その後、今回の研究の山場となる、フィッシャーのスキル理論を用いた定量化の話題に移った。実は、年末の一時帰国の最中も、この点について少々懸念をしていた。
というのも、フィッシャーのスキル理論に習熟していなければ、発話構造をスキルレベルの観点で分析していくことは非常に難しいと思っていたからだ。確かに、私も未だに分析の判断に悩むことがあるが、ここで述べている難しさとは、他の測定者に関するものである。
つまり、測定者間信頼性を確保するために、本来他の研究者に同じように分析をしてもらうのだが、こちらがいくら精緻な分析マニュアルを作成したとしても、彼らに対して私がトレーニングを施し、分析の観点と方法を教え込む必要があるのだ。
この作業には多くの時間がかかってしまい、今回の修士論文でそこまで行えるほどの時間的余裕はない、とクネン先生から指摘を受けた。クネン先生からの代替案として、この修士論文をもとにした査読付き論文を今後執筆する際に、測定者間信頼性を測定することにし、今回はできるだけ精緻な分析マニュアルを作成し、それを活用して私自身の測定者内信頼性を測定するのはどうか、というアイデアを得た。
つまり、作成した分析マニュアルをもとに、私自身がいったん全てのデータセットに対してスコアリングをし、その結果を伏せた後に、無作為でそこからデータを複数個抽出して再度スコアリングを行い、その一致度を確かめるということである。その一致度を測る係数のことをカッパ係数と呼ぶ。
次回のミーティングまでに、カッパ係数の測定をし、上記で言及した箇所を中心に論文の文章を書き進めていきたい。2017/1/16