今日は、文句の付けようがない素晴らしい天気であった。午前中の仕事を終え、ランニングに出かけて心身をリフレッシュさせた。その後、午後からは引き続き、ケン・ウィルバーが提唱した「20の発達原則」について調査をしていた。
構造的発達心理学に馴染みのある人にとっては、もはや当たり前の概念かもしれないが、「ある発達構造が崩壊すると、その構造よりも上の構造は全て消滅するが、その構造よりも下の構造は依然として残る」という考え方について、少し立ち止まって考えていた。
これは、ウィルバーが提唱した20の発達原則のうち、13番目の原則に該当するものである。背筋を登るようにしてふと生まれてきた考えは、多くの日本企業や日本という国そのものが、この原則を犯しているのではないか、というものであった。
頻繁に耳にするのは、日本企業や国家から、能力水準の高い優秀な人財が流出し始めている、というものである。結局のところ、このようなことが起こっている背景の一つに、一定以上の能力水準を兼ね備えた人が存在できなくなってしまうような集合的な文化や仕組みがあるからではないだろうか。
言い換えると、多くの企業や日本国家の中に、ある特定の能力水準を押し殺すような仕組みや文化が存在しているために、結果として、人々はそこから逃れようとする、という構造があるのではないだろうか。こうした構造は、間違いなく、その構造段階以上の人々を消滅させるものであり、その構造段階以下の人々を残存させることに寄与しているように思う。
そこからさらに厄介な問題は、こうした構造が単に、ある能力水準以上の人々を流出させるということのみならず、その組織や国家にいる人々の発達を阻害しているのではないか、ということである。先日、精神分析学と複雑性科学を架橋したある専門書を読んでいた時に、「トランスパーソナル防衛メカニズム」という概念と遭遇した。
これは、イギリスの精神分析医イサベル・メンジーズ(1917-2008)が提唱したものである。この概念の根幹の意味は、私たちの意識が高度化し、自己を超え出て行くトランスパーソナル段階に至る際に、私たちがそこへ行くことを無意識的に拒絶するような防衛反応のことを指す。
私たちは、次の発達段階に到達してみなければ、その段階がどのようなものかを実際に体験することはできないのだ。とりわけ、自己を超え出て行くトランスパーソナル段階というのは、多くの人にとって未知なるものであり、恐怖すら引き起こすような段階だろう。
そのため、私たちがそうした極度に高度な意識段階に踏み出していくことを無意識的に拒否する、というのは納得がいく。実は、こうした防衛メカニズムは、何もトランスパーソナル段階という非常に高度な段階に到達する前に発生するものではなく、どの段階においても発生するものだと思う。
私たちは、こうした防衛メカニズムと向き合い、それを徐々に乗り越えていく形で、次の発達段階に到達していくという見方ができる。しかし、多くの日本企業や日本という国家の中には、こうした防衛メカニズムを過度に強化するような文化や仕組みが存在しているのではないか、と思ったのだ。
これはまさに、上記の問題と密接に関係している。もしかすると今の日本では、ある特定の段階以上の人々が組織や国家から流出していく動きと、そこにとどまる人々の発達が停滞している現象が起きているのではないだろうか。
そして、こうした現象の裏には、ウィルバーが提唱した20の発達原則のうち、13番目の原則が侵されているからなのではないか、と思わされるのだ。