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561. 複雑性と人間発達:Netlogoを活用したシミレーション実習


「複雑性と人間発達」というコースの第二回目のクラスについて、あれこれと振り返りを行っていた。毎回このコースに参加するたびに、多くの学びを得ることができるため、クラスの後の振り返りの量がどうしても多くなってしまう。もちろん、これは嬉しい悩みである。

クラスの前半では、物理学者のラルフ・コックス教授から、ダイナミックシステムアプローチの数学的側面に関する概略的な説明があった。具体的には、「連続システム」と「離散システム」の違い、「微分方程式」と「差分方程式」の特徴、微分方程式を活用したモデル化、「状態空間(state space)」、「アトラクター」の種類、「カップリング」、「線形写像」と「ロジスティック写像」、「バイファケーション(分岐点)」などの基礎的かつ非常に重要な概念について、明確な説明と共に理解を深めることができた。

理論的な講義が終わった後、小休憩を取り、後半は毎回楽しみにしているコンピューターシミレーションの実習を行った。前回と同様に、博士課程に所属しているドイツ人の友人であるヤニックと一緒に演習を行っていた。

本日行ったシミレーション実習では、「Netlogo」というツールを活用した。Netlogoは、エージェント型プログラミング言語を基にしており、このツールを活用すれば、人間や組織などの自律的に行動する存在(エージェント)の行動や相互作用をシミレーションすることができる。

さらには、エージェント間の相互作用がシステム全体にどのような影響を及ぼすかも分析することができる。複雑系研究のメッカであるサンタフェ研究所が提供しているオンラインコースに参加していた時に、すでにNetlogoに触れていたことがあるため、このツールには少し馴染みがあった。

とは言え、このツールの応用範囲は広く、これから自分の研究の中で活用していくことを通じて、Netlogoに関する理解と技術を高めていきたいと思う。このツールは、無料でダウンロードすることもできるし、オンライン上で活用することもできる。仮に、人間や組織を自律的に行動する存在と見立て、その振る舞いや相互作用に関心があれば、このツールは非常に使いやすいのでお勧めである。

今回の実習内容は、Netlogoを活用したモデルの中でも一番有名である「捕食者・被食者の生体数変化モデル」を取り上げた。前回と同様に、ヤニックとあれこれ意見交換をしながら、お互いの仮説と理論を基に、一つ一つのパラメーターの値を変えながら、捕食者と被食者の生体数の変化を観察していた。

各自の仮説や理論通りに、シミレーション結果が出てくると、お互いに大いに盛り上がっていた。以前紹介したように、このクラスには博士課程に在籍している者やポスドクの者、さらには教授も何名かいる。

実際に、私たちの前に座っていたのは、精神科医かつ心理学者のデ・ヨング教授であった。ヤニックと私が侃侃諤諤に議論しながら実習を行っており、その熱気が伝わったのであろうか、デ・ヨング教授の方から私たちのグループに加わりたい、という申し出があった。

ヤニックと私は間髪入れずに快諾し、そこからは三人でシミレーション実習を行っていった。実習を行えば行うほど、時間の展開に応じて動的に変化する複雑性システムの挙動をシミレーションするのに、Netlogoは非常に有効なツールだという考えが増していった。

今回実習で取り上げたのは、捕食者・被食者の生体数変化モデルである。イメージとしては、私たちが農場の経営者であり、農場の生態系を最適な状態に保つことが目的とされている。農場の中には、羊(被食者)と狼(捕食者)が存在しており、シミレーション実習の前半では、農場に最初からいる羊と狼の数、羊の繁殖率、狼の繁殖率、狼が羊を食べることによって得られるエネルギー、という五つのパラメーターを扱っていた。

実習の後半では、羊の餌となる農場の草の成長率、羊が草を食べることによって得られるエネルギーという二つのパラメーターをさらに追加し、合計七つのパラメーターを基にシミレーションを行っていた。

このシミレーション課題に答えていくだけではなく、このモデルを自分たちの研究テーマと関連付けてどのように活用するか、ということについても三人でディスカッションをしていた。捕食者・被食者の生体数変化モデルは、アイデア次第でいかようにも応用できると思う。

例えば、親を捕食者、子供を被食者と見立て、親の叱責を捕食行為とし、子供の行動矯正を被食行為と見立てれば、このNetlogoを用いることによって、その相互作用をシミレーションすることが可能である。

私の研究テーマに適用するのであれば、教師を捕食者、ある生徒を被食者、その他の生徒を牧草と見立てれば、それらの相互作用をシミレーションすることが可能になる。Netlogoは大変奥深いツールなので、具体的な活用方法については、今後折を見て書き留めておきたいと思う。

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