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349. 街をあげての盛大な留学生歓迎セレモニー


昨日はフローニンゲンの街をあげての盛大な留学生歓迎セレモニーがあった。2016年の九月に入学した留学生は2300人超とのことであり、新しく入学した全ての留学生が参加したわけではないと思うが、昨日は久しぶりに多くの人が群がる光景を目の当たりにした。多くの人に囲まれた疲れからか、昨日はいつもより一時間多く睡眠をとることになった。

それでは、思い出せる範囲で昨日のことを書き留めておきたい。

昨日はまず朝一番に、日本の大手人材会社さんとの共同プロジェクトを進めさせていただいていた。日本とオランダの時差は八時間ほどあるが、こちらの早朝は日本の午後に当たり、定時までの三時間ぐらいはなんとか一緒に仕事をすることができる。

また、SkypeやAdobe Connect等のオンライン電話システムも発達しているため、国をまたいでのコミュニケーションもほとんど問題なく円滑に行うことができる。

オランダに在住しながら日本の仕事を継続的に行えることは非常に有り難い。日本の社会との接点を今後も持ちながら、こちらでの探究活動と生活を両立させていきたいと思っている。

午前中の仕事が終わると、昨日知り合いになった京都大学から来た学生と共に留学生歓迎セレモニーが開催されるマルティニ教会に向かった。教会に向かっている最中はそれほど留学生らしき人たちを見かけることができず、このセレモニーはそれほど規模が大きくないのだろうと高を括っていた。

しかし、教会に到着し、中に入ってみると、そこにはすでに無数の留学生がいたのだ。教会のパイプオルガンや壇上を真正面から見れる席を確保することが難しかったので、私たちは左右にある席に着くことにした。

無事に席に着き、隣に座った中国から来たファイナンス専攻の修士課程の学生と仲良くなり、会話を楽しんでいたところ、定刻通りにセレモニーが開始された。セレモニー最初の催し物は、 “MIRA”と呼ばれるフローニンゲン大学の学生音楽グループによるクラシック音楽の演奏であった。

マルティニ教会が醸し出す厳粛な雰囲気の中に、このクラシック音楽は見事に溶け込んでいた。そして、マルティニ教会とクラシック音楽の中に全ての留学生が溶け込んでいくように感じたのだ。

MIRAによるクラシック音楽の演奏により、セレモニーの場が整ったところで、学長からの挨拶があった。学長の紹介があった時、二日前の奨学金授与セレモニーで証書を授与してくださった方が学長であることを初めて知った。

こうしたセレモニーはとかく形式ばった退屈なものになりがちであるが、進行役の二人の学生の掛け合いは、自由な国オランダを語る上で必ず持ち出される種々の話題に触れながらユーモアに溢れる形で進行されていった。また、学長も真面目な内容の中に終始ユーモアを交えながら挨拶を行なっていた。

その次に挨拶を行ったのはフローニンゲンの市長であった。街の政治的代表者を呼ぶあたりにも、街をあげて留学生を歓迎している気持ちが伝わってきた。街の人口200,000人の内、学生が50,000人を越すため、大学都市としての地位をより確立するためにも、街と大学が見事に連携しているような印象を持った。

市長の挨拶も終わり、セレモニーが無事に終了すると、今度は大学のメインの建物に移動し、そこで出店のようなものを見物したり、大学が支給してくれた簡単な食事や飲み物をとった。フローニンゲンの街と大学が密に連携しているおかげで、学生であれば本日はフローニンゲン美術館に無料で入館できるということを聞き、セレモニーが終了したその足で美術館に向かった。

前々からこの美術館を訪れたいと思っていたため、このような機会を得ることできて非常に幸運に思った。フローニンゲン美術館はとてもモダンな造りになっており、内装・外装ともに非常に綺麗である。

これまで単に遠目からこの美術館を見ていただけであったため、館内の広さを完全に見誤っていたことを思い知らされた。じっくりと作品を眺めようと思うと、無料で開放されていた二時間の間に全ての作品を見て回ることは不可能であった。

スイスのニューシャテルで訪れたデュレンマット美術館と同様に、この美術館には私を惹きつける作品が多く所蔵されていたため、後日また足を運びたいと思う。

美術館が受付付近で提供してくれたウェルカミングドリンクを飲み終わり、自宅に帰ろうとしていたところ、とても小柄な青年男性から声をかけられた。

小柄な青年男性:「こんにちは!オランダ語か英語を話せますか?

:「こんにちは。英語なら話せますけど。

小柄な青年男性:「了解です!今から面白いものを見たくないですか?

:「(漂う胡散臭さに対して懐疑心を持ちながら)面白いもの?

小柄な青年男性:「ええ、面白いものですよ〜!

:「何ですか?

小柄な青年男性:「今からマジックをお見せしましょう♪

:「マジック?マジシャンの方ですか?

小柄な青年男性:「ええ、マジシャンをしています。

:「プロのマジシャンですか?

小柄な青年男性:「はい、プロとしてマジックで生計を立てています♪

:「おぉ、それはすごいですね!どのくらいマジックをしているんですか?

小柄なプロマジシャン:「もう10年以上になりますね〜。今は国内のステージや国外を回ってマジックショーをしています。

:「10年以上ですか〜。それは確かにプロの領域に入りますね。ちなみにどこの出身ですか?

小柄なプロマジシャン:「えっ?あぁ、確かに僕の外見だと分かりづらいですよね。出身はオランダですよ。ただ父親がインドネシア出身なものでこんな顔をしています(笑)

:「そうですか〜、オランダ出身なんですね。それでは是非マジックを見せてください。目の前で見るのは初めてなのでとても楽しみです♪

小柄なプロマジシャン:「それでは行きますよ〜。ここに52枚のトランプがあります。一枚好きなものを選んでください。

:「じゃあ、これで。

小柄なプロマジシャン:「(残りのカードをテーブルに広げながら)それでは、どこか好きな場所にそのカードを戻してください。

:「それではここに戻します。

小柄なプロマジシャン:「(広げられたカードを再び一つに戻したところで)それでは一枚抜き取ります。選んだカードは・・・ダイヤの9ですね!

:「(!?)いえ、違いますよ・・・

小柄なプロマジシャン:「おっと、失礼。それではこのカードは不要なので、ハサミで切ってしまいましょう♪ よろしければ切られたカードをテーブルの上に置き、上から手で押さえておいて頂けますか?

:「この切り刻まれたカードを上から手で押さえておけばいいわけですね。わかりました。

小柄なプロマジシャン:「ありがとうございます。それでは行きますよ〜。そのまま切られたカードを手で押さえておいてくださいね。今から三つ数えるので、数え終わったのと同時に手を上に持ち上げてみてください。3、2、1・・・はい!

:「

小柄なプロマジシャン:「カードから手をゆっくり離してもらえますか?

:「えっ、あぁ・・・。あれ!カードが元に戻ってる!

小柄なプロマジシャン:「ふふふ(笑)。それではカードをひっくり返してみてください。

:「おぉ〜!僕が選んだダイヤのキングじゃないですか!!これはすごいですね〜。

小柄なプロマジシャン:「ありがとうございます。そのダイヤのキングはお土産にどうぞ。

その後、とても親近感の湧くこの東南アジア系の顔をした小柄なオランダ人マジシャンから幾つかのマジックを披露してもらった。実際に目の前でプロのマジックを見るのは初めてであったため、感動もひとしおであった。その後見せてもらったマジックも驚きの連続であり、どのようなトリックが隠されているのか全くわからなかった。

彼の名前はGuyllaume Wibowo Goochelaarと言う。またどこかのステージで彼のマジックショーを観れることを楽しみにしている。

Guyllaumeと別れ、フローニンゲン美術館を後にして自宅に帰ろうとしている時、自分が特殊な意識状態の中にいることを確認した。ここ数日は誰かに作られた夢の中で生きているような気がしていたのだ。

今日からは再び自分の内側に流れる時間の中で仕事を進めていかねばならないと思った。2016/9/1

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