一昨日、昨日とフローニンゲンも夏らしい気温であった。その余波からか、今日も比較的気温の高い一日となるようだ。しかし、明日から再び夏らしからぬ涼しい日々になるそうだ。
今朝は最初に、ヴァン・ダイクとヴァン・ギアートの共著論文 “Wobbles, humps, and sudden jumps: A case study of continuity, discontinuity and variability in spatial prepositions”を読んでいた。どちらの研究者も共に、フローニンゲン大学の発達科学研究を支える中心的な人物であるが、ヴァン・ダイクはまだ若い女性の研究者であり、ヴァン・ギアートは公式的にはすでに学術世界から引退をしている。
今年の一月にフローニンゲン大学を訪れた時に、偶然ヴァン・ダイク教授の研究室の前を通りかかり、ちょうど彼女のオフィス・アワーであったため研究室のドアが開いていることを目撃した。彼女の顔を見た瞬間にヴァン・ダイクだということがわかったので話しかけようと思ったが、熱心に論文を読んでいたため、結局話しかけることをしなかったことをふと思い出した。
この論文は、ダイナミックシステム理論を活用した発達研究において最重要とも言える、発達の連続過程と非連続過程について言及している。より詳しく述べると、この論文は「発達の(非)連続性」の定義を明確にし、幼児の言語発達において発達の連続性と非連続性がどのように現れるのかを調査している。
論文の後半は、ダイナミックシステム理論に関する深い理解もさることながら、かなり高度な統計学的知識がないと読みこなすことができない。そのため、統計学の理解がまだ不十分である私にとって、後半部分を正確に読み解くことは難しかった。
しかし、この論文を読むことによって新しい発見があったのも事実である。発達の非連続性について研究する際に、フランスの数学者ルネ・トムが提唱した「カタストロフィ理論」が用いられることがよくある。カタストロフィとは急激な変化を示す現象のことである。
発達プロセスを観察すると、ある段階から次の段階へ移行する時には必ず突発的な変化が生じており、それは基本的には「発達の非連続性」と呼ばれるが、その現象がこの論文で触れられている九つの基準に合致した時に「カタストロフィ」と呼ばれる、とイメージしていただきたい。
カタストロフィ理論を発達科学の研究に適用した先駆者は、現在アムステルダム大学で教鞭をとっているヴァン・ダー・マースである。実際に、彼の研究成果は複雑性科学と発達科学を架橋させた様々な論文において頻繁に引き合いに出されている。
この論文もヴァン・ダー・マースの研究に触れており、非連続的な現象の中でも特殊な発達現象である「カタストロフィ」を特定する九つの基準と検証方法が参考になった。成人の知性や能力の発達において、非連続的な現象が見られることは種々の研究によって明らかになっているが、突発的な変化を示すカタストロフィに焦点を当てた研究は成人発達の領域においてほとんど見られない。
その点を考慮すると、成人の学習プロセスを研究する時に、カタストロフィに焦点を当てることはそれなりに意義があるかもしれないと思ったのだ。2016/8/26