研究者としての留学が本格的に始まるまで、いよいよ二週間を切った。時間的に余裕があるため、学位取得論文に関して今のうちから準備を進めていきたいと思う。修士論文を執筆するのは、米国ジョン・エフ・ケネディ大学時代を含めて二回目となるが、今回の修士論文は研究者としての今後の自分を左右するものであるという位置付けをしているため、綿密かつ最大限の力を注いで取り組みたいと思う。
おそらくこの論文を書き上げることから研究者としての真の意味での第一歩が始まるのだと認識している。つまり、今回のフローニンゲン大学での修士論文を無事に書き上げることができて初めて、知性発達科学者としてのスタートラインにようやく立てるのだと思っている。
今回の論文を単に学位取得のためのものとするのではなく、修士論文の内容を改良する形で主要ジャーナルに投稿したいと考えている。それぐらい、この論文にどのような内容とどのような質を持たせるかが重要なのだ。
フローニンゲン大学で修士論文を執筆するためには、大学が公開している修士論文作成要項を丹念に読むことが重要になると思う。というのもこの要項を見ると、実に細かく論文の評価項目が記述されているからである。
論文のどういった項目をどのように評価するのかを適切に把握しておくことが、学位取得論文をスムーズに書き上げることに有益だと思う。また私の場合、4つ目の修士号を取得した後に博士課程への進学を考えているため、修士論文の評価も優れたものにしておく必要がある。
そのため、この修士論文要項を見ながら、現時点で評価がどれくらいなのかを論文アドバイザーのクネン先生に逐一確認し、最終的には全ての項目を最高評価に持っていくような論文作成戦略を採用しようと思っている。今回のプログラムに応募する前から修士論文の概略を思い描いていたので、今後少しずつ言葉を与えながら、内容を徐々に洗練させていきたいと思う。
これは一番骨の折れる作業なのだが、九月からのプログラムが開始するまでにデータの整理に取り掛かろうと思う。すでに研究の仮説を立てているため、何はともあれ、研究を進めるためのデータの整理をしなければならない。
それでは、論文執筆へ向けた自分の頭の中の整理も兼ねて、論文のどのような項目が評価されるのかを列挙してみたい。
(1)概要、(2)研究手法、(3)研究結果、(4)ディスカッション、(5)要約、(6)文献目録、(7)語彙の使用、(8)図表、(9)研究デザイン、(10)その他、という大きな評価項目がある。これらの10個の評価項目がさらに細分化されており、細分化された項目に対して評価点が与えられ、最後に論文の総合評価が1から10段階で下される。
これから論文を執筆するに当たって、絶えず上記の10項目を確認しながら研究を進めていきたいと思う。
学士論文を含めて、論文を執筆したことのある方であれば思い当たる節があると思うのだが、論文を書き上げる前後で自分の言語能力に変化が生じるのは興味深い点だろう。良かれ悪しかれ、学術論文を執筆すると、英語・日本語を問わず、必ず自分の文体が変化することに気づいている。
これは以前紹介したように、文章を書くことによる効果の一つだろう。つまり、一つ一つの言葉の使い方を含め、文章全体の構成を試行錯誤しながら一つのまとまりとして学術論文を執筆するという実践は、自分の専門分野に関する知識と経験を体系化させることに大きく寄与するのだ。
今回の論文を執筆した後に、自分の言語能力にどのような変化が生じるのだろうか。また、専門分野に関する知識と経験がどのように体系化され、体系化された後の産物はどのようなものなのか、それらの未知な事柄に対して楽しみにしている自分がいるのは確かなようである。