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287. 動的な運動を生み出すバランスボールの効用


ある時から椅子に座るのをやめて、バランスボールに座るようになってから、作業効率や集中力などが格段に向上したように思う。何よりバランスボールのおかげで、心身の調子がより良いものに変化しているのを感じている。

オランダへの引越しの際に、これまで7年間ほど使っていたバランスボールを処分せざるをえなくなり、フローニンゲンでの新居に到着後、新しいバランスボールを購入しようと考えていた。日本であれば、アマゾンで注文すれば事足りるところだが、オランダではそうもいかない。

というのも、オランダのアマゾンは品揃えがお世辞にも良くはないのだ。これは相当控え目な評価であり、実際にはオランダのアマゾンにはなんと書籍しかなく、品揃えは相当悪いのだ。しかも、書籍に特化しているから書籍の品揃えがいいかというと、決してそうではない。

これまでの経験上、洋書の専門書の品揃えは圧倒的にアメリカのアマゾンが優れており、日本のアマゾンもなかなか品揃えがいいという印象を持つ。そして専門書に関しては、イギリスのアマゾンもそれなりに良い。

そうした事情により、オランダのアマゾンで書籍のみならず、バランスボールも購入できないという状況だったため、何とか “Atheleteshop”というスポーツ用品専用のオンラインショップでお目当のバランスボールを購入した。

バランスボールに座って長らく仕事をしてきたが、椅子に座って仕事をするのはやめたほうがいいのではないかと思わされる。姿勢が悪くなるということ以上に重大な問題をはらんでいる気がしている。

ジェイムズ・ギブソンのアフォーダンス理論が示唆するように、椅子というのはそもそも、「静かに座る」という情報を私たちにフィードバックしてくるのだ。

そのため、椅子に長く座って作業をするということは、長時間にわたって身体と精神を静的な状態にしてしまうことを意味するのではないだろうか。これは身体と精神にとって好ましくないだろう。というのも、私たちの身体と精神は本質的に動的なシステムなのだ。つまり、私たちの身体と精神は絶えず動きながら変化していないと機能不全に陥ってしまうのだ。

その点、バランスボールは少し姿勢が動くたびに、それに応じてボールの位置が動き、それに合わせるために自らの身体ポジションを変化させなければならない。身体ポジションを変える際に、身体の内側の筋肉に注目してみると、実にカオス的なパターンで筋肉が刺激されているのが手に取るようにわかる。

私は毎日10時間以上バランスボールに座っているが、そのおかげで生産性が格段に向上している気がするのだ。特記事項としては、通常の椅子に座って書物を読んだり、文章を書いたりすることに比べて、ある種独特のリズム感が備わったように感じている。

バランスボールが生み出す独特かつ微細なリズムに合わせて書物を読んだり、文章を書いたりしていると、読書や執筆に動的な波がもたらされるのである。あとはそうしたダイナミックな波に身を委ねるだけで、自然と作業が進行していくのだ。

人間というダイナミックシステムは不思議なもので、静的なフィードバックを受けている状態では、挙動が静的なものになり、動的なフィードバックを受けている状態では、挙動が動的なものになる。

そうしたことを考えると、バランスボールは身体システムの動きをより動的に稼働させることに一役買ってくれるだろう。また、それが認知システムをより動的に稼働させることにつながるのではないかと感じている。新しいバランスボールの到着が待ち遠しい。

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