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160.意識の特性と「サイコグラフ」について


ここからようやく、インテグラル理論において人間の意識の発達を直接的に扱う領域「左上象限」について説明します。左上象限を見ていくことによって、どの発達測定手法にも共通する「意識の高度分析」というゾーン2の考え方に対する理解が深まるでしょう。

そして、ゾーン2の理解が深まることによって、LASというシステムの特徴をより適切に掴むことができるでしょう。ゾーン2の理解を深めるためには、まず人間の内面領域、つまり「意識」の特性に対する理解を深める必要があります。

意識の特性を分類すると、「タイプ」「状態」「ライン」「段階」に分けることが可能です。現在でもなお生き続けている「タイプ」に関する発見事項は、例えば、内向型・外向型という分類です。タイプというのは、私たちの意識や行動が持つ安定的な特性であり、「性格類型」「男性性・女性性」などもタイプ分類の一つです。

「状態」という分類項目は、西欧の心理学研究において、長年にわたって探求されている領域です。例えば、アメリカの心理学を切り開いたウィリアム・ジェイムズは、瞑想などによって引き起こされる意識の状態変化を探求しました。

意識の状態は、感情や気分の変化、能力の変化と密接に関わります。ここで重要なのは、意識の状態は刻一刻と「変化」するものなのですが、「発達」という概念を用いるのは不適切であるということです。

もちろん、瞑想の実践者は、様々な意識状態にアクセスできる能力を持っていますが、そうした状態変化は永続的なものではなく、一時的なものなのです。人間の意識発達を探求する際に、「タイプ」や「状態」を蔑ろにしないことは極めて重要です。

しかし、それらは「発達」という概念を適用するのが不適切であるため、ここでは発達という概念が適用される「ライン」と「段階」に焦点を当てていきます。

「ライン」というのは、私たちが持つ多様な能力の種類のことを指します。それら多様な能力ラインは、お互いに影響を与えながらも独立に存在しています。

多くの方は、ハーバード大学教育大学院のハワード・ガードナーが提唱した「多重知性」という概念を聞いたことがあるかもしれません。ガードナーの多重知性理論は、私たちが持つ多様な能力ラインの存在を明らかにしています。

ウィルバーは、ラインに関してさらなる調査・探求を行い、ガードナーの多重知性という概念を拡大し、「発達ライン」という概念を提唱しました。ウィルバーの調査によると、ラインは数十にも及ぶとされています。

ここで、道徳の問題に対して適用される推論能力と物理の問題に対して適用される推論能力の差を考えてみましょう。容易に想像できるように、そして研究が明らかにしているように、物理の問題に対して優れた推論能力を発揮する人は、必ずしも道徳的な問題に関する推論能力に優れているとは言えません。

つまり、物理の領域で要求される推論能力と道徳的な判断を行うための推論能力は、互いに異なる領域の能力であり、異なる発達過程を辿るということです。多様な発達ラインの存在を認めることによって、私たちは、人間が持つ異なる能力をより良く理解することができるでしょう。

これから見ていくように、発達心理学の伝統において、多様な能力ラインという考え方は大切であり、LASという発達測定手法の核となる概念でもあります。

発達ラインを研究することの難題は、各々のラインをどのように定義付けるか、発達ラインはどれくらいの数が存在するのかを規定することです。この難題を克服することは難しいですが、カート・フィッシャーのスキル理論を用いれば、能力ラインの定義はより厳密なものになるでしょう。

ここで忘れてはならないのは、「段階」を理解することなしに、ラインを理解することはできないということです。段階は、各々のラインの発達を見定める道標(マイルストーン)のようなものです。

発達を見定める道標は、「意識段階」「意識レベル」「意識階層」というように、様々な名称で呼ばれることがあります。このように、意識の構造的な特性は、様々な名称で呼ばれますが、各ラインには固有の発達段階があり、その発達速度やプロセスが異なるという点を強調しておきます。

ウィルバーのインテグラルモデルでは、こうした多様な能力ラインを視覚的に捉えることができるように、「サイコグラフ」という概念を採用しています(記事冒頭の図を参照)。この図が示す縦軸(y軸)こそが、「発達の高度」を表しており、それは今後の記事で取り上げる主要なテーマとなります。

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