世の中には知性発達理論に基づいた多様な測定手法が溢れています。例えば、スザンヌ・クック=グロイターのMAP(Mature Assessment for Professionals Profile)、ロバート・キーガンのSOI(Subject Object Interview)、ジェーン・ロヴィンジャーのWUSCT(Washington University Sentence Completion Test)、ビル・トーバートのGLP(Global Leadership Profile)、オットー・ラスキーのCDF(Constructive Developmental Framework)などがあります。
これらのアセスメントは、すべて英語で提供されているため、日本人の私たちにはあまり馴染みがないかもしれませんが、欧米においては、このように成人以降の知性発達理論に基づいた多様なアセスメントが存在しているという状況です。
私が主に学習してきたのは、クック=グロイターのMAP、キーガンのSOI、ラスキーのCDFなどですが、ここ数年探求していた測定手法は、以前在籍していたマサチューセッツ州にあるレクティカと呼ばれる組織が提供しているLAS(Lexical Assessment System)と呼ばれるアセスメント手法です。
今後の記事では、LASというユニークな測定システムの全貌が明らかになるように、少しずつその中身を紹介していこうと思います。レクティカの創設者セオ・ドーソンとハーバード大学教育大学院教授カート・フィッシャーは、共同研究を度々行う間柄ということもあり、ドーソンが開発したLASの理論モデルは、フィッシャーのダイナミック・スキル理論の影響を強く受けています。
また、レクティカの共同設立者であるザカリー・スタインはハーバード教育大学院の卒業生であり、なおかつケン・ウィルバーのインテグラル理論に造詣が深く、インテグラル理論の観点からLASを解説している優れた論文がいくつか存在しています。
スタインは私にとってのメンター的な存在であるため、私の個人的な感情が混じっているかもしれませんが、スタインはハーバードに在籍する新進気鋭の教育哲学者・発達論者であり、彼の論文は洞察に溢れているものが多いです。
スタインが指摘しているように、LASは、私たちが持つ多様な知性領域を描写する「サイコグラフ」を作成するための、領域横断的な発達測定手法です。私自身がジョン・エフ・ケネディ大学でウィルバーのインテグラル理論を体系的に学んだという経験を踏まえ、スタインが試みたように、インテグラル理論の枠組みからLASを紹介していきたいと思います。
今後の記事では、大きな流れとして、発達理論と発達測定の歴史を概観した上で、LASの基本的な概念を紹介します。さらに、LASと他の測定手法を比較し、LASの妥当性に言及していく予定です。最後に、多様なサイコグラフを描くために、LASをどのように活用すればいいのかを示し、LASがもたらしてくれる恩恵は何なのかを省察します。