先日、知人の紹介を受けて「頭蓋仙骨治療法(クラニオセイクラル・セラピー)」というボディワークを体験しました。JFK大学院時代に、心と身体の関係を中心とし、様々なボディワークについて扱う身体心理学の授業を履修していたのですが、頭蓋仙骨治療法(craniosacral therapy)の名前を聞いたことはありませんでした。
しかし、当時の課題図書を丹念に再読してみると、頭蓋仙骨治療法について記述があることを最近知り、どのようなものか大変興味がありました。
以前の記事で、身体意識が認知の構造的発達に多大な影響を与えるということを書きましたが、それに付け加えて、脳の健全な構造と機能は認知の構造的発達に不可欠であると改めて認識しています。
ハーバード大学教育大学院教授のカート・フィッシャーは、脳波を測定するEEGを活用し、脳の成長サイクルと認知構造の発達サイクルが極めて強い相関性を持っていることを明らかにしました。例えば、フィッシャーで言うところの認知レベル9(ピアジェで言うところの形式論理思考段階)を発揮するためには、それ相応の脳の発達が要求されます。
インテグラルコミュニティにおいて、ヴィジョン・ロジック(vision-logic)と形容される高度な認識能力は、フィッシャーのスキル理論で言うとおおよそ認知レベル12に対応していますが、正直なところ、こうした高度な認知能力を発揮するための器、つまり脳の構造的基盤が整っていなければ、そうした高次元の認識能力を発揮することはできないのではないかと最近強く感じています。
逆説的には、脳の構造的な基盤を整備し、脳が健全な機能を発揮できるようになれば、高次な認識能力を獲得する第一歩となります。要するに、脳の機能が健全になることによって、高次の意識状態に参入しやすくなり、より高度な認識能力を発揮することにつながりうるということです。
頭蓋仙骨治療法では、頭蓋骨の動きを調整することによって、呼吸しながら頭蓋骨と仙骨がバランス良く動くことが可能となり、脳と脊髄を包んでいる膜の中を流れている脳脊髄液の循環を改善し、私たちの身体が本来持つ治癒力や生命力を回復・改善することにつながるという理解をしています。
現代人の脳は様々な要因によって構造的な歪みと機能的な限界を抱え、それが高度な認知能力を育む際の障壁になっていると思います。ほとんどの成人は、脳にそうした歪みや機能的限界を抱えているため、高度な認識能力を一生獲得することはないというのは極めて腑に落ちます。
頭蓋仙骨治療法は、そうした脳の構造的な歪みを整え、機能を改善させるための優れたボディワークの一つだと思います。