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139. 知性発達理論の影と闇、そこからの救済


新ピアジェ派の功績は、発達プロセスを説明する優れた理論的枠組みを提唱しただけではなく、多様な発達プロセスに内包された複雑性を解析する測定手法を開発したことにあります。実際に、新ピアジェ派が提唱する発達科学は、既存の心理統計手法の領域を再構築し、測定手法の革新をもたらしたと言えます。

新しい測定手法が新しい科学を生み出したという点を考慮すると、私のメンターであったセオ・ドーソンのLASという測定手法はまさに知性発達測定の新たなパラダイムを打ち立てたと言えます。知性発達科学の今後を見据えると、新ピアジェ派が提唱しているようなメタ理論や応用数学のダイナミックシステム理論などに準じて、今後より躍動的に進展していく可能性が高いと見ています。

もし新ピアジェ派の理論やダイナミックシステム理論に基づく厳密な測定手法が浸透すると、知性発達理論に基づいたより洞察に溢れる教育が大規模に展開されるかもしれません。また、教育の領域のみならず、企業社会における人材開発や人材育成にも多大な貢献を果たすと見ています。

しかしながら、新ピアジェ派のアプローチが知性発達理論や教育に果たす役割というのは、これまであまり議論されてきませんでした。フロイト以降、「心理学者というのは救済をもたらす司祭に取って代わった」と言われることがあります。つまり、心理学者が述べることは不可視かつ神聖なものとしてみなされる傾向にありました。

これは発達心理学の領域においても当てはまり、多くの人は発達心理学者が提唱する段階モデルに対して妄信的であり、その妥当性や信頼性について深く検証していません。例えば、「あなたはティール(teal)である」「あなたはヴィジョン・ロジックの発達段階にいる」などという言葉はウィルバーの思想に依拠したインテグラルコミュニティーで頻繁に見受けられます。

しかし、あなたは本当にテーィルなのでしょうか?テーィルという段階は何を意味するのでしょうか?そうした問い掛けすらもないまま、段階表記を盲目的に受け入れている様子は心理学とは言いがたく、どこか宗教的ですらあります。さらに、発達心理学の段階モデルを安易に活用して議論を進めた結果、当該コミュニティーでは自己肥大化現象が起きています。

新ピアジェ派のアプローチは、こうした「カルト的」な自己肥大化現象を解体させる力を持ち、発達段階というデリケートな事柄を適切に取り扱う下地を提供してくれます。また、発達支援に携わる実務家や教育関係者に有益な知識や実践ツールも与えてくれます。

【追記:ハリー・スタック・サリヴァンがダイナミック・スキル理論に与えた影響】

ダイナミック・スキル理論の誕生背景には、ハリー・スタック・サリヴァンによる多大な貢献があります。サリヴァンは新フロイト派に属する精神科医かつ精神分析家でした。ジェーン・ロヴィンジャーが指摘しているように、サイリヴァンは「自我発達理論の父」と称されるにふさわしい功績を残しています。

フィッシャー自身が述べていますが、彼のダイナミック・スキル理論はサリヴァンの自我発達理論から多くの洞察を得ています。実際に、フィッシャーは1970年代から80年代の前半にかけて、フロイトが提唱したエディプスコンプレックスという概念を中心に精神力動理論や自我発達理論を探求していました。

確かにフィッシャーは徐々に自我発達理論から離れていきましたが、サリヴァンが述べるところの情動の統制機能や自尊心など、感情が発達に及ぼす役割を継続して探求しています。

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