認知的発達心理学の枠組みに基づいた発達測定をした後に、どういったフィードバックを行うかということがその人の発達や学習を支援するためには重要であると言われています。確かにアセスメントを受けただけでは全く意味がないので、この指摘は正しいと言えば正しいのですが、現実はそれほど簡単ではありません。
私がインターンとして働いていたマサチューセッツ州にあるレクティカの創設者セオ・ドーソンは、フィドーバックの内容によっては学習や発達を妨げかねないと警鐘を鳴らしています。
レクティカのアセスメントはカート・フィッシャーの「ダイナミック・スキル理論」を理論的枠組みとして採用しているのですが、フィードバック時にスキルレベルの特性をそのまま教えることを避けています。つまり、一つ一つのスキルレベルがどういった意味なのかを事細かにフィードバックすることはないということです。
スキルレベルの特性をフィードバック時に教えない理由としては複数考えられます。一つには、アセスメントを受けた学習者はスキルレベルの記述を「コンテンツ」として学ぼうとしてしまうことに繋がりかねません。とかく現代の教育は何らかの知識という「コンテンツ」の習得を学習者に促す傾向にあるため、この第一の理由が存在することはうなづけます。
しかし、スキルレベルをコンテンツとして学んだところで、真の意味で深層的なスキルレベルが涵養されることはありません。すなわち、スキルレベルを単に知識として取り入れることはスキルレベルの向上に役立ちません。
しかしながら、仮に知識として取り入れるだけではなく、その知識に基づいた具体的な実践がきちんと伴っているのであれば、スキルレベルは成長していくと考えられます。ここで問題となっているのは、スキルレベルの記述を単に表面的な知識として取り入れることです。
スキルレベルの特性をフィードバック時に教えない二つ目の理由は、仮にスキルレベルの特性を伝えると、学習者は高いスキルレベルを獲得することが学習の究極的な目標であると錯覚しかねないということです。往々にして、高度なスキルレベルを獲得することが学習の目的であると思いがちな人は、「発達は善である」という安直な上昇志向の物語に絡め取られていると思います。
こうした発想の下、学習や教育のあり方、発達とは何かという理解が歪められることになるので、単純に高度なスキルレベルを獲得しさえすればいいという考え方に陥らないようにする注意が必要です。