先日、インテグラル・エデュケーションさん主催の勉強会で、ハーバード大学教育大学院教授カート・フィッシャーの「ダイナミックスキル理論」について紹介させていただきました。
当日の勉強会で参加者の方々から寄せられた質問や、勉強会後、参加者の方々から頂いた疑問点などを伺っていると、どうもフィッシャーが言うところ「スキル」というものを明確に伝えられていなかったと反省しています。
一番多い誤解は何であるかというと、フィッシャーの「スキル」という概念を、世間で言われるところの「コミュニケーションスキル」や「プレゼンテーションスキル」といった印象で捉えているということです。
もちろん、フィッシャーはスキルという概念を広く定義しているため、「コミュニケーションスキル」や「プレゼンテーションスキル」というものも、フィッシャーが指摘するスキルという概念に包摂されることは確かです。
しかし、フィッシャーが真に意図しているスキルというのは、そうした「コミュニケーションスキル」や「プレゼンテーションスキル」というものを発動させている深層的な能力のことを指しています。
つまり、「コミュニケーションスキル」や「プレゼンテーションスキル」というものは、ある意味、PCのアプリケーションのようなものであり、フィッシャーが述べているスキルというのは、アプリケーションを動かすOSそのもののことです。
別の表現をすれば、発達理論を学習されている方にとっては馴染み深い、ロバート・キーガンで言うところの自己認識の深まりも、フィッシャーの理論で言えば、一つのスキルとして扱われます。
なぜなら、キーガンは意識領域における自己認識という領域の深層構造について扱っており、キーガンが対象としているものは、決してPCのアプリケーション的なものではなく、まさにOSそのものだからです。
要するに、フィッシャーが述べているスキルというものは、コミュニケーションスキルやプレゼンテーションスキルのような単なる行動能力ではなく、そうした行動能力を生み出す認知的な能力のことを意味しているのです。