新ピアジェ派は、およそ30年間に渡り、ピアジェの根幹思想を受け継ぎながらも、修正が必要な概念や理論に関しては、実証研究に基づきながらピアジェの理論をより洗練化させてきました。
新ピアジェ派の各々の研究者は、それぞれ固有の思想やアプローチを持っているため、彼らはピアジェの貢献に独自の色を加えながらその理論を発展させてきたと言えます。
例えば、ロビー・ケースは、情報理論をピアジェの理論と組み合わせることによって、古典的なピアジェの理論を発展させることに貢献しました。また、カート・フィッシャーは、ヴィゴツキーやダイナミックシステム理論の観点を取り入れることによって、ピアジェの理論を拡張させました。
新ピアジェ派に属する理論家は、それぞれ異なる発達思想やアプローチを持っていますが、これまでの記事で紹介してきたように、共通点があるのも事実です。例えば、新ピアジェ派の共通事項は、文脈や知識・スキル領域に応じて動的に変動する認知構造の存在を認めている点です。
さらに、新ピアジェ派は、そうした動的に変動する認知構造は、ある年齢で発達を止めてしまうものではなく、一生涯に渡って成長・発達していくという考え方も持っています。私たちは一生を終えるまで成長・発達する生き物であるという点は、成人以降の教育・トレーニングに従事する上で大変重要な考え方になるでしょう。
私たちが教育プログラムやトレーニングプログラムを提供する際に、新ピアジェ派が指摘する「認知構造の動的な変動性」という考え方が念頭にあれば、一人一人の学習者が置かれている状況やその日の体調・感情状態に応じて異なるパフォーマンスレベルを発揮したとしても当惑することはなくなるでしょう。
また、学習者が新たな知識領域やスキル領域の学習や実践を開始した際には、その足取りは非常に覚束ないものであり、だからこそ適切な支援や体系的な学習計画・トレーニングプログラムを提供することが大切になります。