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110. 成人以降の教育・トレーニングにもたらす新ピアジェ派思想の意義


私がこれまで成人以降の発達理論に関する講演や講義をする中で、多くの方は最初、人間の心は成人以降にも発達していくという点に驚かれます。発達心理学の代表的な研究者であったジャン・ピアジェの理論は、日本においても広く知れ渡っていますが、その内容はどうしても成人までを対象とした心の発達に焦点が置かれています。

そのため、多くの方は「人間の心は、成人を迎えて成長を止めてしまうものではなく、一生涯にわたって発達するものである」という発想に驚かれるのだと思います。

生涯を閉じるまで、私たちの心は発達していくものであるため、成人以降の教育やトレーニングの重要性は高いといえます。実際のところ、ピアジェの思想を受け継ぎ、理論や実践をより洗練化させている新ピアジェ派と称される理論家たちは、成人以降の学習に関して貴重な洞察を私たちにもたらしてくれます。

そのため、今後少しずつ、成人以降の教育・トレーニングに有益な新ピアジェ派の概念や理論を紹介していきたいと思います。

発達心理学者のローバート・キーガンは、主著「In Over Our Heads」の中で、プロフィッショナルとして仕事に従事するためには、他者や社会への依存状態から脱却し、独自の価値体系に基づいたアクションを起こせる「発達段階4(自己著述段階)」に到達することが求められると述べています。

さらに、私たちの社会には、発達段階4へ到達させてくれるためのシステムや仕組みが不十分であるとも指摘しています。

現代社会の中でプロフェッショナルとして仕事に従事するために、発達段階4以上が求められているという時代の要請と、発達段階4へ到達させてくれるだけの社会的な仕組みが欠落していることを考慮すると、より一層、成人以降の教育・トレーニングの価値が見出されると思います。

それでは、成人以降の教育・トレーニングと関連づけながら、少しずつ新ピアジェ派の概念や理論を紹介していきたいと思います。

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