Lecticaでインターンをしている際に、最初に直面した課題は、概念分析と構造分析の違いを理解することでした。発達理論の領域に足を踏み入れ、インターンを始めるまでの数年間、ロバート・キーガンやオットー・ラスキーが開発した発話構造分析型の測定手法の学習を進めてきたため、インターンの当初、発話内容を分析することに違和感がありました。
キーガンやラスキーが開発した発話構造分析型の測定手法では、そこで何が語られているかという発話内容には着目せず、意味がどのように構築されているかという発話構造のみを分析します。こうした発達測定手法に慣れていたため、発話内容を分析するという視点が新鮮であったことを覚えています。
セオ・ドーソンが開発した測定手法は、基本的にカート・フィッシャーのスキルレベルに基づいてテキストを分析していきます。そこでは、構造分析と発話内容分析の両方がおこなわれます。
上記で述べたように、発話構造を分析する際には、測定者はテキストで語られている内容を正確に理解することが確かに求められますが、実際には、議論の内容を測定するのではなく、議論の構造レベルに対してスコアリングをおこないます。
ここで二つの専門用語を簡単に紹介すると、発話構造を分析することを「スコアリング」と呼び、発話内容を分析することを「コーディング」と呼びます。つまり、スコアリングにおいて、構造を分析するために発話内容に目を通しますが、何が語られているかに囚われることはありません。それに対して、コーディングにおいては、何が語られているかということに焦点を当てていきます。
インターンをしていた際に、スコアリングという複雑高度な技術を習得する前に、コーディングの訓練を数多く積む経験を得ました。スコアリングは、丹念に発話構造を分析していく作業が要求されるのですが、コーディングは、語られている内容が何なのかを特定していく作業であり、Lecticaにおいては、すでにコーディングのシステムが洗練化されていたため、コーディングの作業は、あらかじめ分類化されたテーマや意味内容をプルダウンで選んでいくようなイメージです。
次回の記事は、コーディングの4つの分析対象「領域」「テーマ」「サブテーマ「概念」について紹介したいと思います。