これまでの記事で、シュタイナーが指摘する身体的な発達と認知的な発達との関係性について紹介してきました。特に、シュタイナーが提唱するエネルギー体としての身体に着目しながら、早期からの詰め込み型教育や身体性を無視したカリキュラムがもたらす弊害について言及しました。
再度ここでその点を要約すると、身体の発達および身体ネルギーの発達を無視した教育実践というのは、子供の包括的な発達、つまり物理的な身体のみならず身体エネルギーの発達と認知的発達を阻害することにつながります。
シュタイナーのこうした洞察は、身体的な発達と認知的な発達の双方を綿密に観察することから生まれました。人間の発話行為を単に身体的な発達に見出したのではなく、幼児語から適切な発話に至る際に、より微細なエネルギーが発話行為を生み出している点を発見しました。
つまり、シュタイナーは、発話から始まる私たちの思考活動を単に物理的な身体運動とみなしたのではなく、そこに存在するより精妙なエネルギーとしての運動を見出したのです。この点に関して、ピアジェの段階モデルは、シュタイナーのように微細なエネルギーとしての身体運動にまで踏み込んでいないものの、私たちの身体的な発達と認知的発達を関連づけている点が興味深いです。
例えば、0歳から2歳あたりに見られる「感覚運動段階」などは、まさに認知的発達と物理的な身体発達を関連づけていますし、2歳から7歳あたりに見られる「前操作段階」も、思考の視覚的要素を強調している点において、身体との関連性を見出せます。
ここでさらに興味深いのが、ピアジェの段階モデルとシュタイナーの段階モデルが持つ接点です。一般的に、ピアジェの段階モデルは、7年間を一つのサイクルとし、前操作段階(2〜7歳)、具体的操作段階(7〜14歳)、形式的操作段階(およそ14歳以上)としています。ここでシュタイナーも、7年間を一つのサイクルとする発達思想を持っている点が両者の接点となります。
より具体的に述べると、シュタイナーは、子供たちが経験する二回目の歯の入れ替わり時期がおよそ7歳の頃であり、また身体的に大きな変化を遂げる思春期を迎えるのがおよそ14歳あたりであると指摘し、身体的な変化と認知構造の変化との関係性を指摘しています。
こうした身体的な発達と認知的な発達の相互関係を見出した点に、シュタイナーとピアジェの接点があり、さらにシュタイナーは、思考の発達の基盤となる身体エネルギーを指摘することによって、ピアジェの物理的な身体発達と認知的発達との関係性をさらに異なる角度から捉える視点を提供しました。 質問・コメント・記事の共有をご自由にしていただければ幸いです。