これまで、新ピアジェ派の代表的人物であるパスカル・レオンとロビー・ケースの発達理論を概観してきました。今回の記事は、新ピアジェ派のその他の代表的研究者グレイム・ハルフォードの理論に焦点を当てたいと思います。
まず、グレイム・ハルフォードは、ロビー・ケースが提唱した作業記憶の定義とそれが認知的発達に果たす役割に批判を提唱しました。確かにロビー・ケースは、私たちは同じ問題であっても異なる対応の仕方をし、問題の分析方法や解決策への道筋が各人様々であるということを指摘しています。
しかし、ロビー・ケースは、情報処理能力、特に作業記憶の役割を強調しすぎる傾向がありました。また、作業記憶の発達と認知的発達の関係性について、ほとんど実証的なデータを提示していないということも批判の対象となっています。
そのため、ハルフォードは、特に問題解決能力という領域において、ロビー・ケースの説明モデルに代替する理論を構築しました。ハルフォードの理論で鍵を握る概念は「構造配置能力」と呼ばれるものです。
構造配置能力とは、ある種の推論能力と言い換えることができ、現在目の前で直面している問題を過去経験してきた問題と関連づけ、現在の問題に意味付けをする能力のことを指します。
他の発達理論家の説明モデルと比較してみると、ハルフォードが提唱する「構造配置能力」は、パスカル・レオンやロビー・ケースが提唱している情報処理モデルとカート・フィッシャーが提唱するスキルモデルの中間的な位置づけをすることができます。
というのも、構造配置能力は、既存の類推能力の構造の上により高度な類推構造が構築されるという点において、フィッシャーのスキル理論と近似していますし、類推構造の複雑性は、扱える問題の数や領域の幅に基づいているという主張は、パスカル・レオンやロビー・ケースの情報処理モデルと似ているからです。
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