ロビー・ケースの研究は、この数十年の間、発達理論の分野で大きな注目を集めてきました。実際に、発達心理学のテキストを開いてみると、ロビー・ケースの理論は、新ピアジェ派の代表として最も広く認知されています。
ロビー・ケースの理論が、以前紹介したパスカル・レオンよりも広く認知されている理由としては、ロビー・ケースの分析・測定手法がより発達心理学のメインストリームのアプローチに近いということが挙げられます。
パスカル・レオンと比べて、ロビー・ケースの理論が発達理論の主流派へより受け入れられている理由は、他にも下記の二つの理論的主張と関連しています。一つ目は、異なる発達段階に応じて、私たちは異なる種類の情報に対処するということであり、二つ目は、認知の様々な発達領域は、各々がある程度独立して発達を遂げるということです。
これら二つの点は、人間の思考が持つ複雑な発達現象を捉える際に、より柔軟性のある考え方として受け入れられ、ロビー・ケースは新ピアジェ派の代表的人物としてその地位を築きました。しかしながら、最近の研究では、彼の理論に対していくつか批判が出ています。
ロビー・ケースの理論に批判を提示しているのは、今後紹介していく予定のグレイム・ハルフォードと呼ばれる新ピアジェ派の研究者です。ハルフォードの批判を見る前に、以前に紹介したパスカル・レオンの理論とロビー・ケースの理論との共通点および相違点を簡単に概観したいと思います。
両者の共通点として、ロビー・ケースは、パスカル・レオンが提唱した情報処理能力と認知的発達の関係性に基づいて発達理論を展開しています。より具体的には、情報処理能力の限界が、その人の認知的発達段階を規定するという考え方です。こうした共通点の下、ロビー・ケースは、情報処理能力の変化は、思考構造を再構築する機会となり、新たな発達段階の扉を開くという思想立場を取っています。
しかし、相違点として、ロビー・ケースは、パスカル・レオンが過小評価していた様々な発達要因について探求し、説明モデルをより拡張させました。このように、同じ新ピアジェ派という立場であっても、発達思想やアプローチに若干の差異があるため、その差異を浮き彫りにするためにも、今後新ピアジェ派の代表的人物の核となる考え方を紹介していきたいと思います。
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