元来、新ピアジェ派の理論家の多くは、ピアジェが提唱した段階モデルを人間の情報処理能力と絡めて説明していました。特に、発達段階の成長要因と発達の個人差を情報処理能力と関連づけていました。
その中でも、カナダにあるヨーク大学の教授パスカル・レオンは、情報処理能力と認知的発達との関係性を基に、発達研究を押し進めた研究者です。パスカル・レオンは、人間の思考は二つの要素から構成されていると主張しています。
一つは、認知機能の中でも、作業記憶と呼ばれるものです。作業記憶は、私たちが様々な情報を保持し、それを処理することを促す機能を持っています。また、私たちがある瞬間に保持できる情報量によって、作業記憶の能力は規定されることになります。
二つ目の要素は、思考内容と呼ばれるものです。例えば、概念であったり、ピアジェが言うところのスキーマ、シンボルや言葉、そしてメンタルイメージまで含みます。パスカル・レオンの主張の核心部分にあるのは、処理できる思考内容の数が増大すればするほど、つまり思考単位の数が増加すればするほど、より複雑な思考内容を扱えるようになるというものです。
例えば、数的能力の領域で言えば、ある数がもう一つの数よりも大きいということを決定するためには、それら二つの思考単位を保持できなければならないということです。さらに、それら二つの数に新たな数を足したり引いたりするためには、三つの思考単位を保持できなければならないということになります。
こうした主張から、パスカル・レオンは、ピアジェの発達段階と情報処理単位を関連づけました。より具体的に述べると、ピアジェの前操作段階を情報処理単位1、直感的段階を情報処理単位2、前期具体的操作段階を情報処理単位3、後期具体的操作段階を情報処理単位4、具体的操作段階と形式的操作段階の移行期を情報処理単位5、前期形式的操作段階を情報処理単位6、後期形式的操作段階を情報処理単位7と対応づけました。
情報処理能力と認知的発達を関連づけるパスカル・レオンの主張が示しているのは、あるタスクが要求する情報処理能力を満たしていなければ、そのタスクを遂行することができないということです。つまり、情報処理能力の向上によって、より複雑かつ多様な概念を構築したり、新たなレベルで思考能力を発揮することができるというのがパスカル・レオンの考え方です。
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