ジャン・ピアジェは、認知的発達理論の分野に多大な貢献を残したことで知られています。しかし、そうした功績を讃える一方で、現代の発達理論家は、ピアジェの理論に対して批判を加えているのも事実です。
それらの批判の中で核となるのは、発達現象そのものの捉え方です。ピアジェは、人間の認知的発達は普遍的な現象であると提唱しました。つまり、私たちには普遍的な発達構造が備わっており、その構造に基づいて発達を遂げていくという考え方です。
それに対して、ピアジェ理論の批判者たちは、ピアジェは個人個人の発達的な差異を蔑ろにしていると指摘しました。すなわち、ピアジェの理論は、人々が様々な発達領域の中において、異なる速度で発達を遂げるという事実を適切に説明することができないという批判を受けていました。
それに加えて、ピアジェ理論に対する他の批判は、「段階」という言葉そのものにあります。ピアジェは、固定的な発達段階という概念を適用しながら発達現象を説明していましたが、多くの研究が明らかにしているように、人間は与えられた状況に応じて、あるいは活動領域に応じて、異なる形で機能します。
つまり、ピアジェ理論の批判者たちは、人間の複雑多様な活動を一つの固定的な段階(レベル)に当てはめて説明することは不可能であると述べています。これらの批判に基づいて、ピアジェ理論の限界を超克するべく、様々な研究者がピアジェの理論を再考し、より洗練された説明モデルを構築しようと尽力することになりました。
これらピアジェ理論の再構築を図ろうとしている研究者・理論家を総称して「新ピアジェ派」と呼びます。新ピアジェ派の代表人物は、パスカル・レオン、ロビー・ケース、グレイム・ハルフォード、カート・フィッシャー、マイケル・コモンズ、アンドレアス・デメトリオなどです。
今後の記事で、それら新ピアジェ派の代表的人物の理論を概観し、それら理論の関係について紹介していきたいと思います。
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