ここ数回の記事で、領域特定型発達モデルの限界について言及してきました。もう一度おさらいをしておくと、領域特定型発達モデルの限界点は、発達の可変性を蔑ろにしてしまっているということでした。
もちろん、私たちはある特定の文脈、つまりある特定領域に基づいて能力を発揮していく生き物ですが、領域全般的にわたって発揮される深層的な能力というのも最新の研究結果によって明らかにされています。その一つが、ロビー・ケースが実証した「発達の共時性」という現象です。
発達の共時性とは、ある特定の領域内で獲得された概念やスキルが、それと時間軸を同じにして他の領域内においても発揮されるようになることを意味します。言い換えると、特定領域の知識・スキルレベルが発達した際に、それと同時にその知識・スキルレベルが他の領域においても出現することを意味しています。
この実証結果は、領域特定型の発達論者に大きな驚きをもたらしました。どうしてかというと、領域特定型の発達理論者は、複数の領域にまたがって発揮される能力の存在を認めていないからです。
実際のところ、ロビー・ケースだけではなく、1985年にカート・フィッシャーとルイス・シルヴァンが共同研究によって発達の共時性という現象を明らかにしています。ケン・ウィルバーのインテグラル思想の下、ロバート・キーガンやスザンヌ・クック=グロイターなどの領域特定型の発達論者の研究成果にどうしても目が向きがちですが、領域特定型の発達モデルの限界点を認識し、発達の可変性を認めることは、発達理論の包括的な理解につながると考えています。
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