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51. ピアジェおよびコールバーグの段階モデル:可変性の隠蔽


ピアジェを始めとして、ローレンス・コールバーグなど、段階モデルを提唱する発達理論家の多くは、発達が持つ可変性を無視する傾向にありました。これらの理論家は、基本的に発達が持つ可変性を測定の異常値や誤謬として扱っていたのです。

ピアジェは後期において、自らの思想が持つ限界点を認識し、代替的な枠組みを用いて人間の発達を探求していましたが、いつ・どのようにして人間の思考やスキルが変動するのかを説明するモデルを構築するには至りませんでした。

幾人かの研究者は、ピアジェは発達プロセスに存在する溝、つまり発達の可変性が持つ重要性を強調していたと主張しています。しかし、ある現象の存在を認めることと、それを適切に説明することは異なります。

つまり、ピアジェを始めとして、段階モデルを提唱する発達理論家は、認知構造と環境との間に存在する相互作用を説明することができず、そうした相互作用のプロセスを特定することができませんでした。これらの理論家は、スキル獲得に伴って生じる、全ての人間が持つ可変性に言及することはありませんでした。

要するに、段階モデルの信奉者は、発達プロセスに内在し、観察可能な発達の可変性を説明することなく、その存在を長らく隠蔽し続けてきたのです。以前の記事で発達思想のパラダイムについて紹介してきたように、こうした隠蔽行為は意図的におこなわれたというよりも、パラダイムの持つ力によって無意識的におこなわれていた可能性が高いです。

このように考えてみると、既存の発達理論のパラダイムが発達理論の進展に与える影響というのは計り知れないものがあります。

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