ジョン・ロックを始めとする初期経験論において、人間の心が持つシステム的要素や活動が心に及ぼす影響が強調されることはありませんでした。初期の経験論は、私たちの心は環境から受け取る感覚的経験によって形成されると考えていました。
また、新経験論は、私たちは環境から受け取る感覚的経験という情報を処理する機能を持っていると主張し、それらの機能を知覚分析などによって明らかにしようとします。しかしながら、初期経験論にせよ、新経験論にせよ、心と文脈を切り離す二元論的なアプローチを採用していることに変わりはありません。
新経験論で提唱された「情報処理機能」は、認知心理学に大きな影響を与えました。経験論の影響を受けた認知心理学的アプローチにおいて、心の構造をコンピューターの情報プロセスのように扱う傾向が見受けられます。
しかし、実際のところ、心を情報処理システムとみなす理論のほとんどは、心の構造が持つ質的に異なる階層構造を明らかにしてくれません。すなわち、それらの理論は、ある構造からさらに高度な構造へ到達するメカニズムを明らかにしてくれることはなく、仮に可能だとしても、それらの現象の大まかなスケッチを描くことに留まっているのです。
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