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39. コネクショニズムとダイナミックシステム理論との共通点と相違点


人間の心の発達に関して、生得論や目的論よりも説得力があり、ダイナミックシステム理論と非常に類似した考え方を採用している思想として、コネクショニズムと呼ばれる立場が存在します。コネクショニズムは「結合主義」とも呼ばれ、名前から連想される通り、脳内の神経ネットワークの観点から人間の認知や行動を説明しようとする立場のことを指します。

私たちの脳が可塑性を持つ点を考慮して、コネクショニズムのモデルも、私たちの認知や行動が持つ可変性に着目します。また、コネクショニズムは、私たちの認知や行動は何か不動な構造を持っているのではなく、認知や行動はある種のプロセスであるという立場を取ります。

これら二つの点は、ダイナミックシステム理論の思想と類似しています。ダイナミックシステム理論の代表的な研究者エスター・セレンは、コネクショニズムとダイナミックシステム理論が持ついくつかの類似点と相違点について言及しています。それらの類似点と相違点を簡単に紹介したいと思います。

最初の類似点は、コネクショニズムもダイナミックシステム理論も、認知や行動が持つ構造を、「構造」という象徴に囚われすぎることなく説明するモデルを提示することができる点にあります。

これは一見するとわかりにくいかもしれませんが、つまり、コネクショニズムもダイナミックシステム理論も、認知や行動が持つ構造的な特性を認めながらも、ピアジェやチョムスキーが提唱するような普遍的な構造を認めず、認知や行動は、その場の文脈に応じて構造を変化させ、リアルタイムに構築されていくと考えています。

二つ目の類似点は、コネクショニズムもダイナミックシステム理論も、知識やスキルを実体を伴った構造と見るのではなく、活動の一つのパターンとみなす点にあります。仮に、知識やスキルを実体を伴った構造と見るのであれば、加算・減算・結合・分離させなければ、知識やスキルが発達することはありません。

しかし、存在論的観点からすると、知識やスキルに実体が伴うというのはおかしな話です。もし知識やスキルを実体ではなく、プロセスと見るのであれば、話は変わります。プロセスは時に安定的であり、どこか実体の伴った構造に見えてしまうことがあるかもしれません。しかしながら、プロセスはそもそも動的かつ一時的なものであり、そのため、変化しやすい性質を内在的に兼ね備えているのです。

一方、コネクショニズムとダイナミックシステム理論には、上記のような類似点に加えて、相違点も存在します。コネクショニズムは、脳の構造が持つ異質性を誤った形で用いる傾向があります。つまり、コネクショニズムは、脳が本来持つ多様かつ複雑な構造や可塑性を、単純かつ同質なネットワークの結合とみなしてしまっているのです。

それに対して、ダイナミックシステム理論では、脳の構造を同質なネットワークの結合に還元するのではなく、複雑性や可塑性という特徴をそのまま残しながら、人間の認知や行動を説明していきます。

さらに大きな違いとして、コネクショニズムは発達の究極地点を探求しようとするのに対して、ダイナミックシステム理論は発達現象そのものを探求します。以前の記事で紹介しましたが、発達の究極地点を探求しようとするコネクショニズムの立場は、目的論的な考え方と似ています。

そもそも発達の究極地点など存在しないということを考慮すると、コネクショニズムは発達に関して新たな視点をもたらしてくれながらも、いくつかの問題を含んでいる立場だと思います。 質問・コメント・記事の共有をご自由にしていただければ幸いです。

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