カート・フィッシャーは、ピアジェやスキナーの下で研究者としての道を歩み始めました。そのため、フィッシャーが提唱した「スキル」という概念は、ピアジェの「スキーマ」やスキナーの「オペラント」といった概念に影響を受けています。
フィッシャーが述べているスキルとは、置かれている環境や文脈の影響下で変動する活動のことを指しています。より正確には、様々な文脈下で変動するという他に、スキルは階層構造を持つという条件があります。
つまり、私たちのスキルは、一つの有機的なシステムを構築しており、そのシステムは与えられた文脈において変動するということに加え、階層構造を持っています。フィッシャーによれば、私たちのスキルは、より複雑な階層構造を獲得する方向に発達していきます。
以前の記事で紹介したように、フィッシャーは、スキルが持つ階層構造を大きく4つに分類しました。それぞれの階層構造は、質的に異なるスキルシステムを持っており、各々の階層構造はさらに細かく4つのスキルレベルを内包しています。
4つの階層構造をもう一度振り返っておくと、順番に、(1)反射階層(2)具体的操作階層(3)表象階層(4)抽象階層と呼ばれます。新しい階層構造に到達すると、これまでとは質的に全く異なる方法でスキルを発揮するため、それは私たちのスキルにとって、まさに「大いなる跳躍」と呼ぶことができます。
これら4つの階層構造は、ピアジェが提唱した4つの発達段階と大雑把に対応されることがありますが、厳密な意味では、フィッシャーの階層構造は、ピアジェの発達段階と一対一で対応するわけではないことに注意が必要です。
そして、各々の階層構造は共通する4つの段階構造を持っています。それらは順番に、(1)単一要素段階(2)要素配置段階(3)システム構成段階(4)メタシステム構成段階と呼ばれます。
どの階層構造においても、最初は単純なスキルを獲得する段階から始まります(単一要素段階)。しばしば、単一要素段階で発揮されるスキルを比喩的に一つの「点」で表すことがあります。
その後、単一のスキルが発達するに伴い、徐々に複数の単一なスキルを獲得し、それらの単純なスキルを差異化し、要素を組み合わせる段階に至ります(要素配置段階)。この段階は、一つ一つの点を結びつける「線」のイメージを用いられることがあります。
この段階が深まるに従い、私たちは複数のスキル(複数の線)を一つの「システム」として統合するようになります(システム構成段階)。この段階は、一つ一つの線が「正方形」を形作るイメージで説明されることがあります。
最終的には、様々なスキルから構成されるシステムを複数構築するようになり、それら複数のシステムを統合するようになります(メタシステム構成段階)。メタシステム段階は、複数のシステム(正方形)が統合し、一つの「立方体」を形成する比喩が用いられます。
フィッシャーの4つの階層構造と4つのレベルについて、こちらの動画(http://www.yoheikato-integraldevelopment.com/#!/c1cz2/A388345A-3413-4837-ADCD-051E2C7E113B)が視覚的な理解に役立つと思いますので、参照いただければ幸いです。 質問・コメント・記事の共有をご自由にしていただければ幸いです。