日々、日英バイリンガルの子供たちと接することを通じて、母国語の成熟度合いが外国語の習得にもたらす影響力を強く感じています。外国語習得において、確かにある年齢を過ぎたら、外国語習得が困難になると示唆する「クリティカルエイジ」と呼ばれる現象が存在するかもしれません。
しかし、日英バイリンガルの子供たちの言語能力を見てみると、クリティカルエイジの段階で英語に触れていたにも関わらず、さほど英語力が身に付いていない子供がいる一方で、クリティカルエイジを過ぎてから英語環境に身を置いたにも関わらず、高度な英語力を涵養している子供たちを見かけます。
彼らが日本語で会話をしている様子を観察し、彼らの日本語での文章を観察してみると、母国語を高度に運搬できている子供の方が英語力の運搬能力も高いという現象がよく見受けられます。この点に関して、ヴィゴツキーは、外国語取得において、母国語の成熟度合いが鍵を握るということを指摘しています。
外国語を習得するプロセスにおいて、すでに習得している母国語の言語システムを新しい言語に転用するというメカニズムが働いています。つまり、母国語の言語システムの成熟度合は、他の言語システムの運搬およびその発達に影響を及ぼすということです。母国語の言語システムを他の言語システムにも適用するというプロセスは、まさにカート・フィッシャーが発見したスキルの一般化現象と非常に似ています。
昨今、巷では英語学習の重要性が叫ばれています。もちろん、外国語学習によって、母国語の運搬能力が高まるということもヴィゴツキーは指摘していますが、早期から外国語に強制的に触れさせるのではなく、まずは強固な母国語運搬能力を涵養する方向も模索した方がいいのではないでしょうか。
私自身は、成人以降に英語環境に身をおいて、英語を習得する必要性に迫られましたが、ある程度の母国語運搬能力が涵養されていたために、外国語習得において恩恵を受けた一人です。
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