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19. ヴィゴツキーの最近接発達領域とフィッシャーの発達範囲の違いから得られる成人以降の発達支援の重要性とは?



カート・フィッシャーは、ヴィゴツキーが提唱した理論の一部を取り入れており、フィッシャーの論文を読んでみると、その中でもヴィゴツキーの「最近接発達領域」という言葉が頻繁に出てきます。

今回の記事は、ヴィゴツキーが提唱した最近接発達領域とフィッシャーが提唱した「発達範囲」の違いを紹介し、そこから得られる成人以降の発達支援の重要性について指摘したいと思います。

私たちが何か新しいことに挑戦する際に、独力で達成することができる場合と、他者からの支援がなければ達成できないことがあります。ヴィゴツキーが提唱した最近接発達領域とは、簡単に述べると、独力で達成できる場合の能力水準と他者からの支援によって到達できる場合の能力水準における触れ幅のことを指します。

それに対して、カート・フィッシャーが提唱した「発達範囲」とは、以前の記事で簡単に紹介した「最適段階」と「機能段階」の触れ幅のことを指します。最適段階とは、他者からの支援を通じて発揮される最も高度なスキルレベルのことを指します。一方、機能段階とは、他者からの支援なしに独力で発揮することのできるスキルレベルのことを指します。

一見すると、どちらの考え方も独力の場合で発揮することができる能力と他者からの支援によって発揮することができる能力の水準差のことを示しています。ヴィゴツキーは他者からの支援を、よりスキルレベルの高い者があるタスクや活動に直接的に関与する場合を想定しています。

一方、フィッシャーは、他者からの支援をより広義に捉え、直接的な関与のみならず間接的な関与まで含めています。

フィッシャーが発見した興味深い事柄は、よりスキルレベルの高い者が直接的に活動に関与せず、間接的な支援を与えただけでも、私たちは最適段階のスキルを発揮することができるということです。この間接的な関与の重要性いがいにも、より興味深い発見事項があります。

ヴィゴツキーは、私たちは成長していくに伴い、他者からの支援を得ずとも独力でスキルを発揮できると捉えていました。つまり、最近接発達領域は、年齢を重ねるごとに減少あるいは消滅していくとされていました。

しかし、大変興味深いことに、フィッシャーは、発達範囲は年齢を重ねると縮小していくどころか、最適段階と機能段階の溝が拡大していくということを発見しました。

この発見事項から得られる示唆は、私たちは年齢を重ねて高度なスキルレベルに到達するに従い、独力で発揮することのできるスキルレベルと他者からの支援を得ながら発揮できるスキルレベルの溝が広がっていくため、発達支援がより重要な意味を持つということです。

フィッシャーの研究が明らかにしているように、実際のところ、機能段階は非常に緩やかな発達曲線を描き、最適段階と比較すると、成人以降の伸び率はほぼ横ばいと述べてもいいぐらいです。

そのため、独力で発揮することのできるスキルレベルを磨いていくことも確かに大切だと思いますが、それ以上に、他者と協働し、他者からの支援を得ながらあるいは他者に支援を与える形で、お互いの機能段階を支え合うことがより重要になってくると思います。

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