(The figure from Murphy, 2009)
カート・フィッシャーは、1980年に現在のダイナミックスキル理論の原型である「スキル理論」を提唱しました。当時より、人間のスキルは、4つの階層構造と13個の段階を経て発達するとされています(時折、幼児期に見られる最初の階層を省略し、3つの階層構造を紹介していることがあります)。
上記の図は、各段階が現れる年齢を示していますが、「optimal」と表記されている段階は、他者からの支援を受けながら発揮される「最適段階」と呼ばれるものです。最適段階については、別途詳しく解説したいと思いますが、一言で述べると、他者からの支援を受けながら発揮される最も高度なスキルレベルのことを言います。一方、「functional」段階は、他者からの支援なしに発揮される「機能段階」と呼ばれるものです。
スキルの発達を大きな始点で捉えると、4つの階層構造を発見することができます。順番に、(1)反射階層(2)具体的操作階層(3)表象階層(4)抽象階層となっています(セオ・ドーソンのLASというシステムでは、第五層まで想定し、それは原理・原則階層と呼ばれます)。
各々の階層構造を獲得することによって、私たちは世界を新しい方法で認識することになります。また、各々の階層構造は共通する4つの段階構造を持っており、(1)単一要素段階(2)要素配置段階(3)システム構成段階(4)メタシステム構成段階となります。
どの階層構造においても、最初は非常に単純なスキルを獲得する段階から始まります(単一要素段階)。そして単一のスキルが発達するに伴い、徐々に新たなスキルを獲得し、それらの単純なスキルセットを差異化し、要素を組み合わせる段階に至ります(要素配置段階)。
この段階が深まると、私たちは種々のスキルを一つの「システム」として統合するようになります(システム構成段階)。最終的には、様々なスキルから構成されるシステムを複数構築するようになり、それら複数のシステムを統合するようになります(メタシステム構成段階)。
ある階層構造の最後にメタシステムが構成されると、新たな階層構造が出現します。ここで注意が必要なのは、メタシステムを構築した瞬間に、それは新たな単一要素とみなせるため、メタシステム段階と次の階層構図の単一要素段階は重複することになります。
4つの階層構造と4つの段階を持つため、4×4=16段階としてしまいがちですが、実際には各階層に重複している段階が存在するため、私たちのスキルは13個の段階を経ながら発達することになります。このように私たちのスキルは、13個の段階を経ながら、より複雑かつ統合的になっていきます。
チョムスキーやピアジェは、一つの構造が全ての発達領域に適用されるという静的な発達構造モデルを提唱しましたが、それらとは異なり、ダイナミックスキル理論では、私たちは一つの発達構造を全ての状況に適用するのではなく、文脈に応じて13個のスキルレベルを発揮するとしています。
つまり、文脈が変化し、直面するタスクや活動領域が異なれば、私たちは全く違うレベルのスキルを発揮することになります。
今回は、新たな用語を多く紹介したため、各階層構造および4つ段階に関する説明は別の記事で紹介したいと思います。 質問・コメント・記事の共有をご自由にしていただければ幸いです。